人間にとっての「科学とは何か」という命題を問い直した本。
戦後、科学者をお茶の水博士のような「白衣の聖職者」という具合に人間社会の発展という崇高な理念だけを掲げている人々と見なす風潮があった。しかし著者は、科学は人間的な営みだと主張する。
スピノザが「神すなわち自然」、ガリレオが「自然は神が書かれた書物」と表現したように、神が作った自然=世界を説明するツールとして科学が発展した。コペルニクスの地動説も、ニュートンの万有引力の法則も元々はキリスト教の信仰から出発したものだった。厳密に言うと、近代科学はキリスト教の他、古代ギリシアやアラビアの自然学(代数、幾何学、錬金術)の影響を受けているが。
科学の世界においてはデータの集積が重要である。データというのはギリシア語の”dare(与える)”が語源であり、「与えられたもの」を意味する。
集積されたデータから理論を導き、理論から事実(fact)を作り出す行為は人為的である。そしてfactとfictionは語源("造り出す"の意)が同じというのにも驚き。
たまには、こういう科学もいいな、と思った。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
新書
- 感想投稿日 : 2011年6月6日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年6月6日
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