最後の章を最初に持ってくるという大胆な構成にびっくり。読みはじめはこれが最後につながるんだなぐらいにしか思っていなかったのだけど、最後そのものだったとは。
現在から過去を顧みながら、まずは主人公と関わりがあるもう一人の人物に焦点が当たって話は進んでいく。ここでいったん最初の章が頭から離れるのも面白い。
主人公は確信を深めていきながら、それと同時に傍観者から当事者に知らないうちに立場が変わってしまうところが恐ろしかったし、主人公に肩入れしている読者にもそれを気付かせないのも見事だった。
犯人も動機もほぼほぼわかってしまっているのに事の成り行きが気になって仕方がなくさせるこの文章力。佐藤正午さんを読むのは2冊目だけど特別なものを持っていると思う。近々新作が出るのも楽しみだし、既刊を読んでいくのが今一番楽しみな作家だ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年12月27日
- 読了日 : 2023年12月27日
- 本棚登録日 : 2023年12月27日
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