こころと脳の対話

著者 :
制作 : 茂木健一郎 
  • 潮出版社 (2008年7月17日発売)
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本棚登録 : 275
感想 : 37
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臨床現場などで体感される、関係性を大切にした現象学的なこころの話と、科学的な考えに基づく脳の話。その二つを絡ませた故河合先生と茂木さんの対談集。
この本を読んで思った事は、普段自分が臨床心理学を専門として勉強する中でもやもやとしてたことが、河合先生の言葉で言語化されてすっと気持ちいい納得感のようなものを得られた、という事。
こころを科学的に研究し、普遍的な理論化等をすることで誰でも了解出来るようにする、事が心理学の一つのゴールかもしれないけれど、科学的に捉えられない、個々の関係性の中で動く力動的な力って言うのが、臨床現場では大きく影響しているって事はとても感じていて。だからこそ普遍化できない、曖昧さがあって心理学ってうさんくさくなるのかもしれないけれど、でも全てを科学で割り切れないその曖昧さこそが人と向き合う時に大切になる、と言ったことを河合先生が言ってくれてる気がします。
脳=こころ、という考えもあるけれど、それが全てと考えてはいけない、という考えに賛成です。うさんくさくても、何でも、科学で割り切れない所で人が助かっていると言う事実があるんだから。合理的な繋がりを考えなければすんなり納得できない現代の人の傾向と、非合理的な所で働く何かがあると言う事。単純にS-Rでは証明しきれないと言う事。やっぱり、私は相互交流的な考え方が一番好きなんだな、と再確認しました。
中でも印象に残ったのは、宗教と各国の考え方の類似性(はっきりと言及されているわけではないですが。)、シンクロニシティのお話の部分、箱庭で使われる無意識にこれだ!と分かる力、のお話。それぞれ大変興味深く、新しい知見を与えてくれました。
曖昧ではっきり了解出来ない部分もありますが、お二人とも知識が豊富で、故に凄く分かりやすくお話してくれてるから分かりやすいなと感じました。どちらかというとこころの話が中心となってますが、各考えに対して茂木さんが脳科学の領域からの考えも絡ませてくれているので面白いです。
やっぱり臨床は面白い!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理学関連
感想投稿日 : 2010年7月15日
読了日 : 2010年7月15日
本棚登録日 : 2010年7月13日

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