失敗する兄たちや、頭を使ってなにもできなかった悪魔をみて、そうは言っても実際馬鹿ではどうにもならないのではと、心のどこかでイワンやイワンの国の人たちを否定したくなる気持ちが自分の中に生まれてきたのを客観的に感じたとき、はっとした。
このお話はいろいろな解釈ができると思うが、今回読んでみて考えさせられたのは、自分一人の力では生きていけないのだということ。金に価値を認めない社会が存在したのなら、いくら金を持っていても役に立たない。これはなにも金でなくたって同じことで、たとえなにかを働いた (悪魔の場合は説教をした) としても、その働きに価値が認められなければ、つまり人の役に立っていなければ、働いたことにならないということである。人が社会を形成して生きていくためには、お互いが働きあっていかなければならない。
たしか、読んだ本の内容をA4一枚にまとめると知識が身に付く、といった内容の本のなかでその著者が書いていた、「働くとははた(他人)を楽にすることだ」というような一節を思い出した。
ここまで書いた一方で、そうは言っても~と引っかかった自分の気持ちがいまだに残っていることを感じて、改めて考え直してその理由がわかってきた。いくら個人がよい働きをしたとしても、その働きを受け取れる者がいなければまた、価値が存在しないことになってしまうということ。例えば悪魔が説教をして、そのことに国の人が耳を傾けなかったから価値が生まれないのだが、そこに何らかの情報があったのに、活かすことができなかったのだとしたら、階段から落ちた悪魔を馬鹿にしていいものだろうか? やはり自分は馬鹿に甘んじていることを是とは言えない。
- 感想投稿日 : 2021年7月20日
- 読了日 : 2021年7月20日
- 本棚登録日 : 2021年7月20日
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