君の膵臓をたべたい

著者 :
  • 双葉社 (2015年6月17日発売)
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あなたは、何を信じて生きていますか?

「違う。違うよ。偶然じゃない。
流されてもいない。
私たちはみんな自分で選んでここに来たの。
運命なんかでもない。
君がしてきた選択と私がしてきた選択が私たちを会わせたの。
私たちは自分の意志で出会ったんだよ。」

「誰かと心を通わせること・・かな。
誰かを認める、好きになる、嫌いになる。
誰かと一緒に居て、手を繋ぐ、ハグをする、すれ違う。
それが生きる。
自分一人じゃ生きてるってわからない。」


引用:君の膵臓をたべたい


運命や占いを僕は信じない。

信じるのは必然と自分。
信じるのは直感と気持ち。
信じるのは信じたいと思った言葉。

だって自分の今ある気持ちは
本当に揺るがない真実だと思うから。
それ以上の真実なんてこの世にあるだろうか?

何てことを10代の自分は、1ミリ程度も考えていなかった。

怠惰に囚われ、生きるのが馬鹿馬鹿しいとすら思っていた。

生きる意味なんて考えてなかった。

ただ何となく生きていた。
寂しい人間で、弱い人間だった。

占いや宗教、神を信じて生きる人たちを
ずっと子どもの頃から疑問に思っていた。

信じる力を知らずに。

なんで、自分のありのままを、何も分からない未来を、人の人生を、決めつけられ信じる事ができるのだろうって。

信じられるのは、目に見えるものだけだと思っていたかもしれない。
自分の気持ちだって、疑って生きていたのかもしれない。

数字を信じて
偏差値を信じて
テストの点数を信じて
会社を信じて
役職や地位を信じて
評価を信じて

目に見えるものは、事実だからと言い聞かせて。
事実だったら疑いもなく、信じて間違いないと思っていたから。

けどどこか、寂しさを感じていた。
虚しさを感じていた。
その理由も分からずに。

その理由は、大人になって気づいた。
それは、自分の感情を、他人の感情を、信じようとする気持ちが足りなかったんだ、満たそうとしていなかったんだって。

自分とも他人とも向き合うのが、怖かったんだ。

きっと嫌われるのも、傷つくのも怖かったんだ。
人付き合いを、深い関係を、築く事から逃げていたんだと思う。

だから信じられる数字を、事実を信じて生きていた。
自分の感情と向き合い、知ろうともせずに。

感じている気持ちに、気づかないふりをして

現実逃避を繰り返していたんだと、今になっては思う。

事実よりも大切な、本当の気持ちを蔑ろにして。

誰だって、本当は現実に向き合う事が怖いんだろうと思う。
真実を突きつけられる事が、知ることが、怖いんだと思う。


本当は自分が大切だから、いくら自虐したって、卑下したって、傷つかないように、自分を無意識に守ってるんだろうって思う。

だから、現実を忘れるかのように
何かを信じているのだと思う。

周りの目ばかり気にして、自分を

偽って生きてるんだろうと思う。
そして、何かを頼って生きているのだろうと思う。

それは、
占いかもしれないし
信仰心かもしれない
親かもしれない
友達かもしれない
恋人かもしれない
お金かもしれない
地位かもしれない
権力かもしれない

それが自分を幸せにしてくれると、信じて。

何を信じるのが1番だなんて
決めつける事はできないけど

信じたいと思った自分の気持ちには

嘘をついて生きたくはないと僕は思う。
僕は生きているこの世界を
今自分が生きて感じている
今、この感情を信じている。

だから

自分の気持ちと向き合えず
自分の病気と向き合えず
自分の現実と向き合えず
苦しんでいる人たちを
僕は黙って見ている事ができなかった。

そんなある時、家族が病気になった。
生きていくのが不自由になる重たい病。

悔しかった。
気づけなかった自分が。
何も出来なかった自分が。

だから、家族が、そんな人たちが
もう一度この世界を
もう一度自分自身を
信じられる手助けが、したいと思った。

思った時には、公務員の辞職願を出していた。
自分の気持ちに、初めて正直になったかもしれない。
そんな自分が、今では医療現場に足を踏み入れた。
いや、正確には踏み入れ始めたひよっこだ。

絶対にここで働きたいと決めていた病院があった。
第二志望なんて、滑り止めなんて受けなかった。
そして、その病院で働く事が決まった。

これから、自分の信じた道の上で、どんな苦労とも向き合って、真っ直ぐに生きていくと決めている。

あなたは何を信じて生きていますか?

自分の本当の気持ちに目を向けていますか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年8月18日
読了日 : 2020年8月18日
本棚登録日 : 2020年8月18日

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コメント 2件

胡桃さんのコメント
2021/01/01

看護さんのレビューはいつも真剣で、生きることや人として真摯に向き合われている。そんな気持ちがとてもストレートに伝わってきて心揺るがされます。
この本は私にとっても生きるという大切な気づきをくれた思い入れある一冊になりました。看護さんにとっても、心に届くものがあったようでとても嬉しく思います。
看護さんは、ご家族の病がきっかけで医療の道に進まれたのですね。看護さんのような方に看てもらえたら、きっと病という不幸の中にも、幸せを感じられるだろうなと思いました。言葉で表現しなくても、人の手から伝わる心の温かさは言葉以上に相手に伝わるものだと思っています。
今はコロナ渦のなか、人との距離が広がる一方ですが・・・

医療現場はどこも逼迫し、心身共に休めない状況かと思います。医療現場で従事される方々へ感謝が絶えません。早く落ち着くのを願っています。

看護さんの情感溢れるレビューは、密やかな楽しみです。これからも楽しみにしております。
忙しい日々かと思いますが倒れないよう、ご自愛くださいませ。良いお年を!

看護さんのコメント
2021/01/09

胡桃さん、馬鹿真面目なレビューに丁寧なコメント残してくださってありがとうございます!そしてあけましておめでとうございます

話題性のある本ですが、想像以上に良いストーリーと内容で読んで良かったと感じています

僕は人を動かすのは目に見えない心の温かさだと信じています
思いはきっと言葉と行動になって現れると思っています

コロナが人を遠ざけた事で
人との繋がりの大切さに気付ければ...

お気遣いありがとうございます
読書量はすっかり減ってしまいました

きっとこれからがコロナ医療の本番が押し寄せてくるように感じています
気を引き締めて頑張りたいと思います

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