差別や偏見、劣等感、愛する人との不和や別れ、そして親しい人々の老いや病気、死など、性的マイノリティである主人公の人生が描かれる。作家である主人公の回想という形で構成されている点が面白い。わたしは、多くの性的マイノリティの人々が自分自身の性の不確かな時期に感じる恐怖や葛藤について考えた事はなかったし、バイセクシャルであるが故の疎外感にも思い到ることはなかったし、80年代のエイズという病気がゲイの人々に対する差別をも孕む社会問題であったことも知らなかった。小説の魅力は様々あるけれど、時代も年齢も性別も環境も異なる人々の経験や思いを知る、気付くことが出来るという点は大きい。その意味で、この小説を読むことが出来て本当に良かった。多様性に対して寛容な社会をつくるために、小説はとても良い働きをするだろうと思う。
「きっとすぐに本がどっと流れ込んでくるんじゃないかな」
「この三つの小説がこの子をどこへ導くか、とにかく見てみましょうよ、ね?」
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年3月21日
- 読了日 : 2020年3月19日
- 本棚登録日 : 2020年3月19日
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