あたたかいもの欲しくなる十二月毛布湯豆腐ストーブと君
俵万智による添削歌
ベストセラー歌集「サラダ記念日」の刊行から、気がつけば四半世紀。その後も俵万智は、小説やエッセーはじめさまざまな分野で活躍し、現在は石垣島で暮らしていると聞く。
近刊の新書は、「短歌のレシピ」。雑誌に寄せられた読者の短歌を添削しながら、素材の「調理法」をわかりやすく伝えている。入門書であり、平易な文章でつづられているが、だからこそ端的にテクニックの妙を明かしてくれている。
たとえば、「短歌は、たった一文字で変わる」という言葉。実際、助詞を一文字変えるだけで歌の焦点や質感も変化する。
ちなみに掲出歌は、添削の前はこうだった。
あたたかいものに心がなごみます毛布湯豆腐ストーブと君
堺市 一條 智美
「あたたかいもの」づくしの歌だが、「君」への片恋を読者に印象づけるべく、「欲しくなる」に改稿。「十二月」と年末を指定したことで、なるほど、物語性がかなり強まった歌になる。
背景に物語を感じさせるような歌作りを意識すると、作者と読者との距離もぐっと狭まる。それが、俵万智の得意とする「調理法」でもあるのだろう。
ほか、二首の上の句と下の句を交換するという「荒療治」や、倒置法、格言的なフレーズを活かすなど、具体的な添削例は表情が豊かだ。口語短歌ならではの、しなやかな発想を再認識させられる。
(2013年12月1日掲載)
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- 感想投稿日 : 2013年12月1日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2013年12月1日
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