論理的思考力、言語表現能力の重要性については、他の類書でも上に挙げた力の鍛え方の紹介、あるいは日本人の実力の貧弱さが指摘されている。
しかし本書は、それらの力は、芸術鑑賞の場面でも必要だと言っている。私が驚いたのは、その具体的方法である。
「何人いるのか」「どんな色が使われているのか」「人物は何をしているのか」と徹底的に分析する。絵画の説明をするのに自分の何となく感じた感想は、何も述べていないのと同じことなのだと気付かされた。
私は本書を読んで、まず「自分とは何か?」と説明できるようになりたい。他者と時間的、空間的、歴史的にどのような共通点、相違点があるのか、それを分析するには「読書が必要である」と痛切に感じた。
なぜなら読書とは、文字を読む作業だけでなく、他者に触れ自己と他者との共通点や相違点を確認していくそれでもあるからである。
また、今の状況を考える場合にも、「歴史的に見てどうなのか」と多量の読書経験があれば、それだけ判断材料が増えることにもなり、読書は有効である。
久々に身の引き締まる思いがした。国民一人一人の言語技術を向上させるためには、まず自分が言語技術の修練を実行する必要がある。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
知を磨く
- 感想投稿日 : 2011年10月24日
- 読了日 : 2011年10月24日
- 本棚登録日 : 2011年10月24日
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