戦争の日本史 23

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  • 吉川弘文館 (2007年7月1日発売)
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日本はなぜアメリカと戦争をしなければならなかったのか。なぜ、あのような悲惨な戦いになったのか。これはぼくにとって常に問いかけたいテーマである。ぼくは、日本とアメリカが戦争をしたのは満州の利権を日本が独占したことから来ていると思っていたが、この本を読むと、日本とアメリカは大きな利益の対立はなく、戦争をする必要はなかったのだという。アメリカにとって主要な問題はドイツだったし、日本も本来中英との戦いに主力を注ぐべきところだったのだ。それがアメリカとの戦争が中心になったのは、海軍の早期決戦思想によって、ミッドウエーやガダルカナルまで進出してしまったこと、つまり戦線を大きく太平洋にひろげてしまったことである。本来、日本は東南アジアからイギリスを追い出し、資源を確保できればよかったのだ。
また、陸軍は中国それにソ連を警戒していたから、アメリカとの戦いは海軍に任せるつもりだったから、陸軍に応援の要請がきたとき小出しに兵を出し、その結果無意味な戦闘をさせて多くの人を殺してしまった。ガダルカナルの攻防はその最たるものであろう。戦争とは総力戦であることの自覚が足りず、攻撃中心主義に走ったことで、護衛、補給が手薄になり、餓死、海没死で多くの人を犠牲にしてしまったこと等々、敗戦の原因を本書は一つ一つ検証する。
本書の特色は他にもいろいろあるが、多くのデータをあげたこと、たとえば厭戦思想を投降兵の数の増加で示したこと、今度の戦争における天皇の責任を細かく追いかけ、その責任の度合いを問題にしたこと、真珠湾奇襲論争、零戦神話、特攻隊の成功率を一つ一つ検証したことで、これまでの戦争をあつかった書物とは異色のものにしあがっている。

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感想投稿日 : 2007年7月31日
本棚登録日 : 2007年7月31日

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