戦争の日本史 23

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  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642063333

作品紹介・あらすじ

「東亜新秩序」を掲げてアジア諸国に進出した帝国日本。日米交渉の失敗から、中国・イギリスだけではなくアメリカを主敵とする戦争へと突入する。日本の敗因を徹底検証。戦後六〇年を経た今、アジア・太平洋戦争を問う。

感想・レビュー・書評

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  • 日本はなぜアメリカと戦争をしなければならなかったのか。なぜ、あのような悲惨な戦いになったのか。これはぼくにとって常に問いかけたいテーマである。ぼくは、日本とアメリカが戦争をしたのは満州の利権を日本が独占したことから来ていると思っていたが、この本を読むと、日本とアメリカは大きな利益の対立はなく、戦争をする必要はなかったのだという。アメリカにとって主要な問題はドイツだったし、日本も本来中英との戦いに主力を注ぐべきところだったのだ。それがアメリカとの戦争が中心になったのは、海軍の早期決戦思想によって、ミッドウエーやガダルカナルまで進出してしまったこと、つまり戦線を大きく太平洋にひろげてしまったことである。本来、日本は東南アジアからイギリスを追い出し、資源を確保できればよかったのだ。
    また、陸軍は中国それにソ連を警戒していたから、アメリカとの戦いは海軍に任せるつもりだったから、陸軍に応援の要請がきたとき小出しに兵を出し、その結果無意味な戦闘をさせて多くの人を殺してしまった。ガダルカナルの攻防はその最たるものであろう。戦争とは総力戦であることの自覚が足りず、攻撃中心主義に走ったことで、護衛、補給が手薄になり、餓死、海没死で多くの人を犠牲にしてしまったこと等々、敗戦の原因を本書は一つ一つ検証する。
    本書の特色は他にもいろいろあるが、多くのデータをあげたこと、たとえば厭戦思想を投降兵の数の増加で示したこと、今度の戦争における天皇の責任を細かく追いかけ、その責任の度合いを問題にしたこと、真珠湾奇襲論争、零戦神話、特攻隊の成功率を一つ一つ検証したことで、これまでの戦争をあつかった書物とは異色のものにしあがっている。

  • ハル・ノート日本挑発説は一般的には否定的のか。まぁ、冷静に考えて、ドイツと開戦したいなら、ドイツ相手に謀略使って挑発すれば良いよね。わざわざ両面作戦する必要無いし。
    そもそも、日本にとって太平洋戦争の目的というか目標も曖昧なんですな。アメリカ本土攻撃なんて、最初から検討すらされていないし、どうなったらアメリカが戦争をやめてくれるかっていうのが誰にもわかっていない。
    当時の政治体制がいかにダメダメだったかというのを再認識する。

  • 2007年刊行。吉田裕教授の諸見解なら、岩波新書の著作の方がまとまっている感がある。

  • 太平洋戦争を、中国戦線、東南アジア戦線、太平洋戦争の3つのカテゴリを含むものと捉えて、背後の政治情勢を論じつつ各戦局を時系列に取り上げて論じていく。

    具体的な戦局についてのミクロの視点と、世界情勢といったマクロの視点の両方がバランスよく描かれている。
    他の著作の引用が多く、若干読みづらい。
    地図や図はもっと多いほうがわかりやすかった。
    太平洋戦争についてのある程度の理解がないと、議論についていくのが難しい。

    軍部の暴走だとか、民族解放を謳ったものだ、といったステレオタイプな意見を特に取り上げて、正確性を論じていたのは中々面白かった。

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著者プロフィール

吉田 裕(よしだ・ゆたか)
東京理科大学准教授。専門はカリブ文学及び思想、文化研究。著書に『持たざる者たちの文学史 帝国と群衆の近代』(月曜社)。訳書にノーム・チョムスキー『複雑化する世界、単純化する欲望 核戦争と破滅に向かう環境世界』(花伝社)、ニコラス・ロイル『デリダと文学』(共訳、月曜社)、ポール・ビュール『革命の芸術家 C・L・R・ジェームズの肖像』(共訳、こぶし書房)、ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』(月曜社)、スチュアート・ホール、ビル・シュワルツ『親密なるよそ者』(人文書院)など。

「2023年 『アンカット・ファンク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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