すいかの匂い

著者 :
  • 新潮社 (1998年1月1日発売)
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本棚登録 : 747
感想 : 78
5

斬新な装幀は安西水丸さん。すいか=夏。
1998年に出版された短編集でずいぶん昔の作品だ。
江國さんの短編集は好きなものが多いかもしれない。
『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』『いつか記憶からこぼれおちるとしても』『号泣する準備はできていた』の3つが好き。

本作は小学生の少女の頃の夏のかけらが11片。
少女特有の自意識や鮮やかに残る他との交流が繊細に描かれていて、どれを読んでも懐かしいような、寂しいような、これが郷愁というものかい?という気持ちになる。
特に好きで共感したのは「焼却炉」。
学校にやって来た学生劇団員に、ほのかな同士意識を抱く少女のもどかしい気持ちがよかった。そりゃあ小学生相手じゃ。だけども小学生にも自意識はあるという。
叔父が父親役をこなす「ジャミパン」も心に残った。「ほかの父親にできて信ちゃんにできないことはないのよ」という母親のセリフがなんだか好き。なんていうことはないんだけども……。

この感じ、男性は理解できるのかなぁ。
かけらを集めて生きていけそうな気がしてくる。

暑いときに、読みたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 江國香織
感想投稿日 : 2014年5月6日
読了日 : 2014年5月5日
本棚登録日 : 2014年5月6日

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