さぶ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1965年12月28日発売)
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本棚登録 : 2466
感想 : 279
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斉藤孝「読書力」の中で紹介されていた中高生向け20冊のうちの一冊。時代小説を読むのは久しぶりだった。

歌川広重の表紙と、背表紙の「大丈夫。独りじゃないよ。」に、この語りかけ沁みる。。と思いながら読書。

話の主人公はどうみても栄二。それなのにどうして著者はタイトルを栄二の無二の友、三郎の「さぶ」にしたのか、物語を読み進めていくうちにその理由がわかる。…分からない人は分かるまで読み込むべき本。

無実の罪を着せられ自暴自棄になる栄二を、ひたすらに支える、シャバの人たち、さぶ、おのぶ、おすえ、人足寄場の、与平、赤鬼、役人。
「受難」と「赦し」で栄二が成長していく中で、栄二と周りの人々の心の動きが、胸に迫る。
「独りじゃないんだよ。」と繰り返し色んな人に心から励まされ、人間力を高めていく栄二。
私だったら、…許せないかも。私、まだまだ人間力が足らない。修行せねば。。
ひとかどの人間の周りには、それを支える人たちがたくさんいて、支えられる人、支える人、どちらもが輝いている、生きることは素晴らしいんだと思わせてくれる本。山本周五郎万歳!

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学校司書時代に、この本を読まなかったことを後悔した。学校図書館こそこの小説に出て来る「人足寄場」だ。本があるところには、自分も含め、はみ出し者が集まるのを肌で感じて来たが、この小説を読みながら、図書室に来てくれていた子どもたちのことを思い出した。図書室、本を読んだり、勉強したりするだけじゃなくて、みんなの心の休憩室、心が成長する場所であって欲しいと願っていた。学校図書館に集う子らに幸あれ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中高生20(齋藤孝選)
感想投稿日 : 2022年3月19日
読了日 : 2022年3月17日
本棚登録日 : 2022年3月2日

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