車輪の下 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1951年12月4日発売)
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本棚登録 : 9706
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ヘッセの自叙伝とも言われている本作。この作品が描かれた頃も、今も、学業をおさめる中で心が壊れていく子どもはやっぱりいるんだな。
神学校に入学する前の束の間の休暇にまで勉強させようとする周りの大人たち、その中で靴屋のフライクおじさんだけが、まともなことを言っている。
「おまえの年ごろにゃ、十分外に出て運動し、休養も十分しなくちゃいかん。なんのための休暇だい?」正にこれが正しい。
小学校にいた時に、1年生の入学後から夏休み明けに壊れてしまう子を何人も見てきた。幼稚園で英語や算数や平仮名カタカナ、とにかく詰め込んで勉強してきた子どもは、小学校に入学してから伸び悩み荒れる。新しく学ぶことに「感動」が無いからだ。ハンスが壊れていく様子を読み進めながら、フライクおじさんがハンスの父親だったら、結末が変わっていたかもしれないと思った。
魅力的な同性への淡い感情も、異性への思いも、みずみずしい青春を存分に味わったならば、ハンスはもっと生きられたのではないだろうか。
巻末の高橋健二さんの解説が秀逸。解説を読んでから本編を読むことをお勧めする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中高生20(齋藤孝選)
感想投稿日 : 2022年4月2日
読了日 : 2022年4月2日
本棚登録日 : 2022年3月23日

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