とにかく綺麗で、というか綺麗って単語が陳腐なくらい、美麗で艶やかな文章でさらりと描かれたとても気持ちのよい一冊。
思わず鳥肌がたつくらい、何もかもがいい。
瀬名垣と真志喜の間に強くたちはばかっている過去の記憶と罪の重さ、その一方でずっとそばにいたいと思う気持ちの強さがひしひし伝わってくる。
ひととひとの距離、これをこんなに上手に気持ちよく描けるひともいるんだなあ。
それがこの物語を作っているのであり、もどかしさすら感じさせる。だけれど、そのもどかしさと同時に、登場人物の心の奥に込められた深い気持ちに触れてほんわかする。
人は罪を負ったままでは人を愛してはいけないのだろうか。
この「月魚」は、決して情熱的な話ではない。
さらりとした、話。
なのにこの作者の手にかかると、その淡白さがむしろ奥が深くてどっぷりとした世界観を作り上げる。
三浦しをんというこの筆者に出逢えて本当によかった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
三浦しをん
- 感想投稿日 : 2014年2月4日
- 読了日 : 2008年12月5日
- 本棚登録日 : 2014年2月4日
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