この作品の中には、「起承転結」がないと言えるのではないかと思う。
事件らしい事件は何も起こらない。普通の高校生が体験するような…ありきたりなことがあるだけ。
ドラマチックな物語や、ロマンチックな展開もない。
作りものの感動もないし、泣けるような切なさもない。
万引きを疑われたり、花火大会に行ったり、犬を連れて海へ行ったり…と、そんな感じで物語は集結してしまう。
この作品の魅力は、何よりも登場人物たちの驚くほどの魅力にあるのだ。
このことについては、巻末の解説で金原瑞人さんが特筆していらっしゃる。
"登場人物が、信じられないほど魅力的なのだ。とくに主人公の里穂と美咲がいい。ふたりとも、ろくに勉強もできないし、何かの目的に向かって邁進しているわけでもないし、中途半端だし、いってみれば、なんの根拠もないくせに、「何とかやっていけるという自信」だけはある。
あんたは、負けないよ。負けたことなんて、一度もないじゃないか。美咲だけじゃない。あたしたちは、負けないのだ。しょっちゅう酸素吸入器や点滴のお世話になっていても、万引きを疑われても、「いくら?」と、おじさんに尋ねられても、高校を退学させられても、負けてしまうわけには、いかないのだ。
こんな理穂と、病弱でどこかで死を意識しながらも、理穂以上に現実をたくましく生きている美咲のふたりは、(~省略)なんとなく、似ているのだ。"
理穂と美咲の関係は決して"親友"とか呼べる類のものではない。
ふたりはどこかでお互いに支え合っているし、お互いを大切に想い合っている。
だけどそれを親友と呼べるか、と言えば、答えは否なんじゃないだろうか。
金原さんは解説の中で、ふたりの関係を『共犯者』だと言及している。
共犯者。
素晴らしい比喩。
端的で、的を得た――。
この言葉に含まれたもろもろは、読めば分かるんじゃないか、とだけしか言えない。
とにかく、この小説は犯罪小説らしい。
実際には犯罪など全く無関係の世界なのに、
犯罪小説らしい。
理穂と美咲は共犯者、なのだ。
彼女らの魅力に、息遣いに、思わず息を呑んでしまうだろう。
余分な登場人物がひとりとしていないのだ。
壮大な世界観の中、すべての登場人物が自分らしくそれぞれ生きている。
そんなところが、面白い。
私は文春文庫の「ガールズ・ブルー」を購入したのだが、実はポプラ社からも出版されている。ポプラ社の方では、2巻が続編として既に出ている。
こちらも読まなきゃ。
理穂や美咲、如月、睦月がどんな魅力を放つのか、続編も楽しみで仕方ない。
- 感想投稿日 : 2014年2月4日
- 読了日 : 2008年12月18日
- 本棚登録日 : 2014年2月4日
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