新 怖い絵

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年7月30日発売)
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感想 : 63
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この「怖い絵」シリーズはこの本で5冊目だそう。
その中で私が読んだのは多分2冊。
今まで読んだ本と比べてこの本はトーンダウンが否めなかった。
インパクト感が薄れているし、ちょっと趣旨とズレてないか?というのもあった。

今までの本と同じく、一見見ただけで怖い、気持ち悪い、という絵やこの絵のどこが怖いんだろう?というのがある。
まず、最初の絵、フリーダ・カーロの「折れた背骨」という絵は一見して気持ち悪い。
女性の体の真ん中がすっぱりと割れていてその中に一本の柱が骨のように通っている。
そして、この絵を描いたフリーダ・カーロの半生が紹介されているが、その説明を読んでこの絵を見た時に「怖い」と感じるものはなかった。
そして、続くミレーの「落穂拾い」。
何故、この絵が怖いのか、その後の説明文を読んで何となくピンとこなかった。
そんな感じで読んでいて怖いな・・・と思う部分が絵からもその絵を説明されている文からもあまり感じられない。

特にこれちょっと違うんじゃないか・・・と思ったのは有名な殺人ピエロ、ゲイシーの絵、そのまんまピエロを描いた絵が紹介されていること。
別に芸術的な絵でなし、描いた人間は芸術家でもなかった訳だからちょっとこの本の趣旨とズレていると思う。
それでもそれなりに面白かったらいいけど、ここに書かれているのは本やテレビで紹介されている事だし、私が殺人者の絵を見て知りたいのは絵に表れている作者の異常心理。
だけど、この本の作者は心理学者ではないからそこには触れられていない。

ただ、興味深いな・・・とか、なるほど・・・と勉強になった事もあった。
例えば、フラゴナールの「ぶらんこ」という絵。
この絵は一見して美しい女性がブランコをこいで、それを男性が下から眺めているという美しい絵だけど、その背景にはその時代のフランスの階級層の結婚制度がかいま見える。
実は皮肉で残酷な絵だと、この絵を見ただけでは分からない。

また、絵に描かれている状況や時代、背景を読み解くには絵に描かれている絵を見ればいい、というのは勉強になった。
レーピンの「思いがけなく」は、みすぼらしい恰好の男性が部屋に入ってきて、それを迎える家族らしい人たちが描かれているが、その絵に描かれた絵を見るだけで、それがどの国で、どの時代なのか、男性がどうしてこのような恰好をしているのかが分かる。

でも、この本の説明文を見なくても絵を見ただけで、何となく不安な気持ちやザワザワした気持ちになる。
どことなく、何かが変だと感じるし、描かれている人物の表情だとか、色づかいだとか、怖いように描いてないのに、見ていると何か落ち着かない気分になる。
私のような絵の分からない者にもそう感じさせる。
それが絵の作者の力量なんだと見ていて思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年1月8日
読了日 : 2017年3月16日
本棚登録日 : 2017年1月8日

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