獄の棘 (単行本)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年2月28日発売)
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本棚登録 : 80
感想 : 18
3

若い刑務官の目線から刑務所で起きるあれこれを描いた話。
7話収録。

「赤落」
主人公の良太は刑務所に勤める若き刑務官。
彼はある日、キャリア刑務官の命により、刑務官の中で行われているギャンブルについて調べる事となる。
賭けは「赤落」と呼ばれ、被告人の刑が確定した後、控訴するか否かを賭けるというものだった。
ちょうどその頃、刑の確定した男性がおり、刑務官らは1人を覗いて控訴する方に賭ける。

「脱獄の夜」
模範囚で刑期が満了に近い受刑者が脱獄を企てる。
そこにはある事情がー。

「プリズン・グルーピー」
プリズン・グルーピーとは、犯罪者に同情し、追いかけまわす人間のこと。
主人公の刑務所にちょっとした有名人の受刑者がおり、その男性のプリズン・グルーピーの女性が現れた。
やがて、二人は獄中結婚するが、そこには別の事情が絡んでいた。

「幸せの天秤」
工場作業のない日に行われる講話。
そこに寺の住職と犯罪被害者家族の男性がやって来て講話をする。
その後、受刑者たちに書かせた感想文に、ある人物を許せない、殺したいというものが見つかる。
その感想文を書いたのは誰なのか、主人公が探る内に見えてきたのは刑務官から受刑者に対する酷い虐待だった。

「矯正展の暗号」
受刑者たちが作った家具を販売する矯正展。
その売れ残った家具に数字を羅列したものが見つかる。
やがて、その数字の暗号を解いた時、強盗を示唆したものだと分かるがー。

「獄の棘」
最初の話でキャリア刑務官に刑務所内の賭けを調べろと言われた主人公。
それは仲間を裏切る事であり、この話で主人公は姿の見えぬ相手に脅される事となる。

「銀の桜」
刑務所に研修で新人がやって来て、主人公は指導を任される。
その頃、受刑者の一人がコップの破片で自殺を図るという事件が起きる。

読んでいて、ここまで刑務所の中の人間関係は殺伐として恐ろしいものなのか・・・と思った。
主人公のいる刑務所は一応、他の刑務所に比べたら情がある方となっているけど、それでもかなりなものだと思う。
辞めていく刑務官が後を絶たないというのも分かる。
刑務官自身がまるで犯罪者のような・・・癖のある人間ばかりで、私ならここで働いてたら精神的におかしくなるだろうと思った。

そんな風にアクのある人物が多いせいか、主人公があまりにも個性が薄いという印象を受けた。
「いい人」とさかんに周りが言うけど、どこがいい人なんだかイマイチ伝わってこない。
「普通」というのが「いい人」という事なのかもしれないけど・・・。
他の、クセのある刑務官の上司や先輩もどこか中途半端な人物設定という気がした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年7月12日
読了日 : 2017年7月12日
本棚登録日 : 2017年7月12日

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