その妻 (中公文庫 あ 61-7)

著者 :
  • 中央公論新社 (2012年6月23日発売)
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感想 : 28
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その妻はある女を殺そうとしていた。
その妻の名は聡乃。
殺そうとする相手の名はモナミ。

兼業主婦の聡乃の夢は専業主婦になる事。
しかし、夫の融也は転職を繰り返し経済的に不安定なため中々その夢は実現しない。
しかも、厭世的な夫はこんな世界に自分の子供を送り出したくない、として子供を作る事も拒否している。
そんな夫がいきなりとんでもない事を言い出した。
世話になった人気デザイナーのモナミが余命いくばくもないと診断された。
だから仕事を辞めて1年の間、モナミに付き添いたいと言う。
普通ならとても承知できない話。
でも何があろうと自分の考えを押し通す夫を普段から知っている聡乃は素直に承知してしまう。
だが、その後モナミの事を知っているデザイナー関係者から信じられないような事を聞かされて彼女の心は疑心暗鬼に陥る。
さらに絶対に許せない真実を知った彼女はモナミに殺意を抱く。

これ、普通だったらありえないだろう~という話だと思います。
自分の夫が期限つきとは言え、仕事を辞めてまで別の女性と暮らす事を承知するなんて・・・。
そんな事を普通に言う夫も信じられない。
だけど、この話を見ているとそうしてしまう主人公の女性の気持ちが理解できました。
その部分がものすごく丁寧に描かれているからです。

でもあまりにその辺の心情ばかりが書かれていて、実際に起きる出来事には大した変化がないので退屈な話だと思いました。
とにかく、グダグダ、グダグダ、心の中で煩悶している。
それがずーっと書かれているという感じ。
ラストに行き着くまでモナミと直接対決するという場面があればスカッとする話となっていたと思うんですが・・・。

大体、1年間も人のダンナを「借りる」くせに、1本の電話もよこさないような非常識な女性ってどうなん?と思います。
普通に考えて・・・。
私だったらその時点でもう怒り心頭って感じで、すぐにその女の所に乗り込んで行ってると思う。
そんな訳で、主人公の心情は理解できるけど、スカッとしない後味の悪い話でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 明野照葉
感想投稿日 : 2013年7月4日
読了日 : 2013年5月3日
本棚登録日 : 2013年7月4日

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