死者の裏切り

著者 :
  • 宝島社 (2009年11月6日発売)
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本棚登録 : 56
感想 : 13
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自宅で不倫相手と会っている所に、帰って来るはずのない夫が帰って来た。
その後、夫は家を出て行くと言い、階段を下りる所、転落し亡くなった。
妻である主人公の祐子は愛人と共に夫の死を隠す事にする。
資産家である夫の遺産を引き継ぐために。

その後、地下室に夫の死体を隠した祐子は夫が自分とケンカして家を出たと夫の勤務先と警察に届ける。
全ては夫が自ら失踪、蒸発したとする画策。
所が、夫が蒸発した事を知った姑が探偵を雇う事に。
真実を追求していく探偵の目を逃れるため、祐子は夫に似た身元不明の死体を夫とする事にした。
その間、確かに死んでいるはずの夫から離婚届けが届いたり、死体が動いた形跡があったりする。

主人公は最初そういうつもりはなかったけど、犯罪を犯す事になった美女で、その犯罪を追求する側が油ぎった巨漢の探偵というのがちょっと変わった設定だと思いました。
自然と主人公の立場になって読んでしまう。
「いや。ここでそんな事するのは軽はずみでしょう」とか、私ならこの場合、どう対応しどう言うかだとか・・・。

そして、悪い事をしている女性なのに、心情的にもやはり彼女の立場になって見てしまう。
タイトルからして結末は何となく皮肉で主人公には残念な結果になるのだろう・・・と見当はついていましたが、その内容がこういうものだとは・・・。
生きている時も死んでからも夫に裏切られるなんて・・・。
妻の立場としてはやるせない。
やった事は別として、主人公に同情してしまいます。
結局、悪女と思われた主人公より周りの方は一枚上だったという事でしょうか。

初めて読んだ作者の本ですが、とても読みやすい文章だと思いました。
内容もシンプルだし、いい意味で一本調子で頭に入りやすい。
最近の小説は複雑な話が多いですが、この本は登場人物の言動が素朴だし、ストーリーもちょい昔の小説を思い出させました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年9月21日
読了日 : 2013年9月21日
本棚登録日 : 2013年9月21日

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