ニュルンベルク裁判 (中公新書 2313)

制作 : 板橋拓己 
  • 中央公論新社 (2015年4月24日発売)
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感想 : 23
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ニュルンベルク裁判の概要について。あの試みによってドイツの非ナチ化、非武装化、民主化などが進められようとしていた。そこで気になるのはなぜあれほどの残虐な犯罪を行ったのか、そして「ナチス」がナチスたりうる理由とはなんなのか、ということである。

アメリカが普遍的な法律による平和の実現ということを目指してあのニュルンベルクを行ったらしく、それでもあの犯罪を裁く法律はあまり定着せず、さらに恩赦の規制も働かなかった。

私が見るところではこれはある意味ナチス(宗教的、神話的、一元主義的)な私小説言語による社会統治をした時に全体に起こってしまった犯罪を多元的法律的言語で解決しようとした試みとも言える。

しかし一つ気になったのは最後の部分にナチスの「植民地支配に対する挑戦」を批判しているような部分に関してである。つまりこれは植民地支配側の方が正しい正義を持っており、そこから外れるものを裁こうとした、ということになってしまう。例えばその法律が正しそうに見えたとしても、この支配原理を持っているということが何かナチスは陰謀によって潰された独立論者ではなかったのかという気がしてくる。今回裁くべきはもう一つ、植民地支配によって確かに起こっていた現地民族殺戮とジェノサイドの罪に関してである。これは非対称性を克服する試みでもあり、さらに植民地支配側の児童売春や大量殺人などが指摘されてきている今、慎重に検討せざるを得ないと思う。

確かにあのカトリシズムの言語をもつ人々が奴隷支配思想を持っており、そして自分は特別だから何をやってもいい、という自分なしの相対主義に陥りがちであると思う。その問題をどう解決するかというのが今まさに必要な問題かもしれないのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: political
感想投稿日 : 2018年6月19日
読了日 : 2018年6月19日
本棚登録日 : 2018年5月25日

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