敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人

  • 岩波書店 (2004年1月30日発売)
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2年半積ん読状態だったものをようやく読了。戦後アメリカの占領政策のもと、日本人と国がどう形作られてきたかがつかめる良書。現在の私たちの価値観や良心の根底が作られた時期ともいえ、とても参考になる。「占領政策をリードしたのが戦勝国のアメリカであり、侵略の被害者である中国人や朝鮮人、インドネシア人やフィリピン人ではなかったことが、彼らに対する懺悔の気持ちを損なわせる決定的な要因となった。」「GHQの絶対的な権力による自由民主化という、矛盾した体制による仕組みづくりが、あちこちに矛盾を残すこととなった」「義理、人情、助け合い、平等という、昔から日本人が持ち合わせていたとされる心情は、戦災孤児、未亡人、負傷帰還兵などには発揮されず、弱者に対する深い愛情は持ち合わせていなかったともいえる。」「戦後発行された書籍等に共通する感情として、例えば学徒動員や特攻隊の死は悲劇とされているが、彼らが殺した被害者の死には触れられることはない」「天皇を崇拝し、軍部を支持していた国民が、終戦と同時に敵国であるアメリカを支持するようになった。こうした変化が悪いのではなく、なぜこうした変化が起こったのかを理解する必要がある」「それまでの価値観を破壊し、転換させたのはアメリカかもしれないが、日本人はものすごい勢いでそれを受け入れ自分たちのものにした。これはもともと日本人側に受け入れる土壌があったと言える」「民主主義を絶対権力者に求めたり、社会主義を天皇の威光に訴えるなど、思想の混乱がうかがえる。これは現代でも起こっていることではないか。そこを見落とすと、予想もしていなかった事態に陥ることがある」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年10月5日
読了日 : 2016年10月5日
本棚登録日 : 2014年3月12日

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