内田樹さんの著書は初めてだったが、とても多白かった。なぜ若者は勉強や仕事をしたがらないのか、ゆとり制度の弊害とか、親の経済的な理由とか、いろいろ言われている中で一つもピンと来なかったが、この解説は腹に落ちた。人間にはわからないことの先送りという能力が備わっているが、最近の若者はこの先送りを大量に行っていること、またそのことを無かったことにしていること。6ポケットで育った子供たちは、労働主体ではなく消費主体の人格が小さな頃から備わっているので、教育にしても労働にしても金銭価値に置き換えて考えるようになっている。ゆえに、なぜ勉強しなければならないのか(=それは何の価値があるのか。実は「価値がない」と思っているけどねの裏返し)、一生懸命労働したところで低賃金で苦しい生活が見えているのになぜ働くのか、という基準で判断する。同時に、親や社会の言いなりにならず、自分で判断できる人は自立した人であるとか、先のことはわからないから今を楽しもうという人はカッコイイという価値基準を持っているので、いくら努力を訴えたり、将来のリスクやリターンを語っても効果がない、など。
自分を振り返り、乱読していて思うのは、自分が知らないことは価値がわからないということ。わからないのに「価値がない」などと判断することは恐ろしい。知らない人と話したり、知らない土地に出かけたり、異なる価値観に触れてみたり、芸術、スポーツ、歴史、ビジネス、なんでもそうだと思うんだけど、知ることで成長するし、同時にリスクをヘッジできることになる。これこそが学びだと思うなあ。
- 感想投稿日 : 2017年1月11日
- 読了日 : 2017年1月11日
- 本棚登録日 : 2016年12月26日
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