舞台は江戸中期。旗本への昇進を目指す若侍が、出世街道から逸れるような仕事を振られ、嫌々やっていくうちに、どんどん引き込まれる物語。その魅力的な仕事とは、罪人の「なぜ」を引き出すこと。罪を認め、おとなしく処罰される罪人。巻き込まれたもの、親しかったものは、なぜそのようなことを引き起こしたのかについて知りたいと願う。主人公は罪人と向き合い、心の底からその真意を引き出す。聞いてみれば納得。理解に苦しむようなことはないが、自分自身もそういった本心をひたすら隠していたり、思わぬ暴発を起こしたりすることもある。この若侍も、淡々と出世の道を歩むことより、このような人間の本質に触れることに惹かれていく。ミステリーとして読むと、それほど複雑なカラクリではなく、簡単に結び目が解ける感覚。ただ、それぞれの一途さ、矜持、父子の想いなど、改めて思い起こすことができるさわかかな読後感。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年11月11日
- 読了日 : 2022年11月11日
- 本棚登録日 : 2022年10月26日
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