日本政治外交史の泰斗による日本の近代論考。政党政治、資本主義、植民地に加えて天皇制についても述べられています。
日本に憲法を導入しようと渡欧した伊藤博文に対し、プロイセンの公法学者グナイストは、社会の結びつきを強める機能を宗教に認め、「日本は仏教を以て国教と為すべし」と勧告します。
対して伊藤は、既存の日本の宗教にヨーロッパにおけるキリスト教の機能を見出だすことはできず、「我が国にあって機軸とすべきは独り皇室あるのみ」との断を下します。「神」の不在が天皇の神格化をもたらしました。
この伊藤の判断が、戦前においては天皇の神聖不可侵性に、戦後には日本国民の象徴へとつながっていきました。
筆者は宮内庁参与として、象徴天皇を誠実に務められた平成天皇を間近で見てこられました。
平成から令和へと時代は移っても、平和を願い国民の象徴を模索され続けた陛下の思いは大切に守っていかなければならないと再認識させてもらえた著作でした。
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- 感想投稿日 : 2019年4月30日
- 読了日 : 2019年4月30日
- 本棚登録日 : 2019年4月30日
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