山口二矢烈士と、老政治家浅沼稲次郎双方の人生が交錯した「一瞬」を細かく描いたノンフィクション作品。
烈」という漢字には烈火、烈々というように激しさ、勢いの良さがこめられている。烈士とは、「激しい気性をもって、自分の信念を貫きとおす男子」を指すらしい。山口二矢烈士は十七という若さで、野党政治家である浅沼稲次郎を討った。そこには、純粋な国を愛する気持ち、憂える気持ちが交錯した結果だと思う。罪を起こした彼に賛同することはできないが、そこまでの行動力や純粋に国を思う気持ちには頭が下がる思いがした。山口二矢烈士の左翼への怒り、それとは同時に右翼への絶望はどのようなものだったのか。自分を奮い立たせ、起こした行動の結果残ったものは一部右翼、保守派からの賛美だけなのか。守りたかった国の未来はこんなものでいいのか。そこまでして残したものは何か私にはわからなかった。
読んでいて苦しかった作品でした。それは、私もまたこの国を憂えているからだと思う。今となっては、山口烈士のような人間は現れることはない。時代も変わった。なんだかなぁ、こんなもんかあ、と思う世の中だ。今は亡き若き志士に心から同情する。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2011年4月29日
- 読了日 : 2011年4月27日
- 本棚登録日 : 2011年4月26日
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