春夏秋冬ときて、そしていつの間にか卒業の春。
学生時代というのはあっと言う間。
よくいる大学生のよくある学生生活に、犯罪や悪ふざけという思わぬストーリー展開、そして恋愛、挫折も絡めた五人の満ち足りた日々。大きなヤマがあったわけでなく、淡々と過ぎる時間の愛おしさにじわじわくる。その後巣立つ社会は荒れ果てた砂漠のようでもあり、学生時代は厳しさに放出されるまでのオアシスなのかもしれない。(自分は)それに気づいたのは後になってのことなのですが。
しかし、この五人が様々な出来事で体験したことで得た結束力や、奇跡を素直に信じる気持ちがあるなら、この先もオアシスは現れるに違いないと思えた。そんな前向きな原動力が湧くような一冊だった。
熱血な西嶋君とは対照的な、ちょっと冷めた目で世間を見る北村君の語りが良かった。ちょっとこっぱずかしいが、青春小説という雰囲気が出ていると思う。
莞爾君の言葉が目にとまった。「本当はおまえたちみたいなのと、仲間でいたかったんだよなあ。」
それは、こういう青春いいなぁ、と遠い目をして思った読み手の自分でもあった。
解説を読んでどれだけ救われたことか。無駄な(無意味な)時間を過ごすこと。そうやって無意味な時間を積み重ねていくことで、ゆっくり見えてくること、分かってくることが必ずある。焦らずに、その時を待てばいい。若い頃(出来れば学生の頃)読んでいれば、尚良かったのでしょうが、その頃は刊行されてなかったわけで。
卒業ソングが聞こえてくるこの時期読めて良かった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年3月12日
- 読了日 : 2022年3月12日
- 本棚登録日 : 2022年3月12日
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