その場所にはいかなる不安も苦しみも貧しさもない楽園。ルソーとヤドヴィカが最後ひとつになり「夢をみた」場面は胸にしみた。
最初、なにげに本の表紙の「夢」を見たときと、読み終えた後ではまったく印象が変わった。絵画の作者の思いの深さが伝わってきたというか。絵を見るとき、難しく考えていた。敷居が高すぎて、何を表現しているのかわからない、とか。
だけど本書を読んで、ありのままに感じたままに受け取ればいいんだ、とすごく勉強になった。
読みながら、絵を調べ、文章と絵を同時に見る、という贅沢な読み方も初めて経験(少々労力要ったけれど)。
日曜画家として貧乏な画家生活を送るルソー。落選者の集まる展覧会でもからかわれ。家族も病気で次々と失った。
同じアパートに住む婦人、井戸水でごしごし洗濯をする無邪気なヤドヴィカに恋心を抱く。そんなルソーに孤独を見た(やり切れないというか)。ヤドヴィカの夫はルソーの絵の理解者であるが、ヤドヴィカも少しづつルソーに興味を持ってゆく所が面白かった。
対照的ではあるが、互いにひかれあうピカソとの出会い。ルソーの人柄もよく表れていた。
聡明で、慈愛深く、いつも冷静な織絵という印象だったが、最後心理的に不安定になったところに女性らしさ(母性)を見、それを救うティムとのやり取りが印象的だった。
動物園での場面はほっとした。
その後、ティムの言及通り、美術館の監視員として働く織絵。「コレクター以上にもっと名画に向き合い続ける人、美術館の監視員だよ」
世界まで昇りつめた織絵が故郷へ戻り監視員として、大好きな絵の近くで仕事をしている所、良かったです。
- 感想投稿日 : 2021年2月20日
- 読了日 : 2021年2月20日
- 本棚登録日 : 2021年2月20日
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