楽園のカンヴァス (新潮文庫)

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著者 : 原田マハ
  • 新潮社 (2014年6月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101259611

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楽園のカンヴァス (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 噂どうりの本当に面白い小説だった!
    普段は静かな場所でしか本の内容が頭に入らない自分が
    電車の中、あっという間に物語世界に引き込まれ、乗客の姿も、おしゃべりなおばさんたちの話し声も、窓の外の景色も、全部消え去った。
    美術や絵画というある意味敷居が高く特殊でコアな世界を、
    特別な知識を持たずとも誰にでも楽しめるミステリー、
    いや、エンタメとして物語を構築してみせたマハさんの手腕にはもう脱帽です(笑)

    ある日、ニューヨーク近代美術館(MOMA)の学芸員ティム・ブラウンに届いた一通の手紙。
    それは名前は知られつつも誰もその姿を見たことがない
    伝説の絵画コレクター、コンラート・バイラーからの招待状だった。
    熱帯雨林咲き乱れ様々な動物たちが身を潜める密林の中、
    赤いビロードの長椅子に横たわる
    長い栗色の髪をした裸身の女。
    それこそがフランスの画家アンリ・ルソーが残した1910年の作品で、二十世紀美術における奇跡のオアシスであり、物議を醸し出す台風の目となった傑作「夢」。
    そしてそれと同時期に描かれたと見られる夢と同じ構図の「夢を見た」という作品。
    バイラーはその真贋鑑定を若き日本人ルソー研究者の早川織絵とティムで、まるでゲームのように争うことを依頼する。
    作品をつぶさに調べるのではなく、バイラーから提供の古書に記された七章からなる物語を一日一章読み進めることによって、作品が本物か偽物かを七日目に判断するという、まさに未知の調査方法だった。果たして「夢を見た」という作品は本物なのか? 早川織絵とティム・ブラウンの真贋対決の勝敗の行方は…。

    史実と創作を絶妙に交えながら描かれる貧しき画家アンリ・ルソーの生涯。
    架空のストーリーなのにマハさんが語ると水のような自然さで読む者の心に浸透し、
    それは限りなく真実に近づいていく。
    まるでルソーを主人公にした冒険小説みたく、心躍るエピソードの連続にページを繰る指が止まらなくなる。

    そこにプラス、何かを企んでいそうなバイラー氏の代理人のエリク・コンツや、早川織絵のボスでテート・ギャラリーのチーフ・キュレーターであるアンドリュー・キーツ、
    世界最大のオークションハウスのディレクターであるポール・マニング、インターポール(国際刑事警察機構)のアートコーディネーターで謎の女性ジュリエット・ルルーなど、様々な人たちの思惑が複雑に絡み合うことで実にスリリングな効果をもたらし、ミステリー小説としても一級品の輝きを放つのです。

    また愛すべきおバカな(笑)ティム・ブラウンや容姿端麗で頭のきれる早川織絵など印象的な登場人物の中でも、
    ルソーに愛され絵のモデルとなり、絵の中で永遠を生きることを決意する女性ヤドヴィガや
    ルソーの才能にいち早く気付き彼を後押しする天才画家パブロ・ピカソの人物像が実に人間臭く生き生きと描かれているのも、なんとも魅力的で引き込まれます。

    いい小説は読む人の心の中に物語が生まれる。
    結論を押し付けずに、読む人が思いを巡らすための余白を届けてくれる。

    本当に読みやすく、ページをめくる指が止まらなくなる面白い本なので、
    「美術や絵の話苦手だしな~」っと思って避けてる人も、
    先入観ナシに一度トライしてみて欲しいです。

  • ルソーという奇才画家をめぐり、見果てぬ夢に人生を絡め取られた人々の物語。

    ある富豪の策略に導かれ、隠れたルソー作品の真贋を巡って対決することになる、アメリカ人男性キュレーターと日本人女性研究者。
    ルソー研究者である2人は、ルソーの隠れた作品と真実に迫る瞬間に深く陶酔しつつ、好敵手同士だけがわかる絆を深めながらも、それぞれの事情の為に不安に苛まれています。
    そんな彼らの対決を利用しようとする人々もたくさんいて…。

    そして、時間軸を異にした、奇才ルソーを見い出した不世出の天才画家と1組の夫婦の物語。

    各人の思惑と時間軸が交差した時に明かされる真実とルソーを敬愛してやまない2人のそれぞれの決断、そして、未来の物語の後味の良さはさすがマハさん、という感じです。それから、彼女の美術を扱う作品では、美術作品を資産(金)としてしかとらえてないような一種の憎まれ役が出てくる点もこの方らしい。

    恋愛と美術ミステリーがうまくミックスされていますね。そして、作品をめぐる最大の真実は闇の中へ…。

    ただ、マハさん自身の某過去作と構成がものすごく似ており、それを昔読んでしまっていた身としては、ラストが途中でなんとなくわかってしまったのはちょっと残念でした…。

  • 読み終わった瞬間、視界が滲んだのはどうしてなんだろう。

  • ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。

    ルソーの「夢をみた」は真作か、贋作か。壮大すぎるテーマを元に真実を探すティムと織絵。その裏には次々と思惑を持った人々が絡み、いったいどうなるんだろうとわくわくしながら読みました。印象派は好きでよく美術館にも足を運ぶ方でしたが、こんなに熱を持って語られたらルソーの魅力を感じなかった自分が残念な人に思えてきた(笑)し、ミステリとしても面白い。結末はわりと衝撃でしたが納得もできた。ルソーという画家への愛をもった二人がこれから先も絵に寄り添って幸せな道を歩むことを感じさせる終わり方で、幸せな気持ちで読み終えました。表紙を見つめて、しばし恍惚。

  • 素敵な作品だった。
    アンリ・ルソーへの深い愛情と知識にあふれ、読み終わったあとには今すぐルソー展を見に行きたいと思わせるほどの力があった。
    同時に、絵画の魅力を知るには、どうしても一種の感性が必要なのだとも思った。
    アンリ・ルソーの絵は見たことがある。でも、特別印象に残ったことはなかった。
    せっかく美術館に行っても、心にも記憶にも残らなければ何の意味もない。
    ただ、感性の不足は知識によって多少補完することができるのではないかとも思った。どんなところが魅力なのか。その絵の背景に何があるのか。どんな思いで描いたのか。それを知ってから見れば、絵の感じ方も変わるかもしれないし、気にならなかった何かが目に留まるようになるかもしれない。

    当然ながら、この作品に描かれた大部分は創作だ。「夢を見た」という絵も、「物語」も存在しない。
    それでも、一枚の絵が、どんなにか人の心を動かしてゆくのか、情熱やときめきを与えてくれるのか、教えられたような気がする。
    もちろん、絵画を資産としてしか見ない輩もいるが、奇跡のようにして存在するその一枚の絵を、命のように守ろうとする人も、偏愛する人もいるのだろう。

    みずみずしく、美しいミステリだった。
    真贋の分からぬ一枚の絵を巡り、様々な思惑の中で物語は意外な方向へと向かってゆく。
    血は一滴もながれない。
    そんなことをしなくても、人の心はちゃんと動くのだ。

  • 一気に読みきりました!
    とても面白かった!
    MoMAで本物のルソーを見てみたいな。

  • 久しぶりにすっごくハマれた作品。
    最近、美術関連のお仕事してるのもあり、よりハマれました。
    ルソーってそんなに好きなアーティストさんじゃないけど、興味深い論評でした。真作か贋作か

  • ルソーの絵画に秘められた物語をたどりながら真贋判定に挑む2人の学芸員と研究員。研究員は岡山の大原美術館で監視員を務める早川織絵という日本女性。彼女の過去と現在、そして読後に未来も想像させる読み応えのある美術ミステリーだ。

  • 岡山の大原美術館で監視員として働く、高校生の娘を持つ43歳のシングルマザー早川織絵が主人公。ところが経歴が明かされ只の監視員ではないことがわかるところから、これからの展開にワクワクしてくる。
    フランスのソルボンヌ大学で博士号を26歳最短で取得し、アンリ・ルソーの研究ではオリエ・ハヤカワの名前は有名だったことが明かされる。
    そして、ニューヨーク近代美術館(MOMA)のチーフキュレーター、ティム・ブラウンからの日本へのルソー作品貸し出し交渉の窓口に織絵指名がなされたことから、17年前のスイスのバーゼルでの織絵とティムの関わった物語が始まる。
    織絵とティムの関係やニューヨークでの再会の結末も興味深いが、20世紀初めのアンリ・ルソーとピカソとの関係やルソーの作品のモデルとなったヤドヴィガの物語等興味深く、是非作品絵画を観に行きたくなった。
    原田マハ氏の小説は10冊目で、どれも感動的な結末で幸せな気分になるのだが、この「楽園のカンヴァス」は氏の経歴ならではの絵画の物語の世界に引き込まれる新しい楽しさを経験し、幸せな気分になった。

  • 読み終わった時、脳裏に美術好きの父がなぜだか浮かんできて、「嗚呼、貸さねば……!」と。疎遠になりかけていたのも忘れて、思わず押し付けるように勧めてしまった……。そして夢中になった父に釣られて母までのめり込んでしまった……。家族総出で夢中に……。

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楽園のカンヴァス (新潮文庫)の作品紹介

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。山本周五郎賞受賞作。

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