なんとなくな日々 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2009年3月2日発売)
3.64
  • (49)
  • (116)
  • (137)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 1101
感想 : 100
4

穏やかな秋の日、お日様があたるお気に入りの場所でこの本を読むと、ほっこり癒されます。
解説でも書かれていますが(串間努さん著)、「川上さんにはもっと人にいえないような体験がきっとあるに違いないと思いますが、それは私も同じなので、大人なるものそのようなことは詮索しないものなのであります」

きっと大変な半生を送ってこられたのに、「なんとなく」な日常を、さらりとありのままに表現されている。読み手のほうは、ゆるく楽しんでおられる様子に安堵し笑えてしまう。そういう言葉選び、起こる出来事を面白く捉えられてクスっと笑えてしまう。肩の力を抜かせてもらえる。
例えばこんなところ、
お葬式の帰り道、河童に会ったという彼女(お知り合い?)のお話。河童に似た生き物、あるいは河童らしきものではなく河童。「ほんとうなの、その話」
そのたびに彼女は真面目な顔つきで深く頷くのであった。
のせられ、居るわけないと思いながら思わず河童の顔が浮かぶ。

これは自分(私)か、と思う所もあった。人の顔を正視するのが苦手なところとか、行きつけのお店を作るのが苦手(私の場合は、どこまで距離を近めていいか戸惑う、次もしゃべるのかと戸惑う)とか。そうそうほんとうに、と思うこと多い。

なんとなくな日々1 
つくづく川上弘美さんは海沿いが似合うなと思う。東海道線下りに乗り、熱海方面に電車で揺られがたごと行く。一人でも、大事な人と二人でも良い(グループは合わなさそう)。

ここも好き 
雨はなかなかやまない。わたしはやきとりの串を持ったまま、雨をじっと眺めている。春の雨をじっと眺めている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月17日
読了日 : 2020年10月16日
本棚登録日 : 2020年10月15日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする