猫好きな優しい青年悟と、元は野良の愛猫ナナ(オス)。ひとりと一匹の「最後の旅」の物語。
猫は得意ではないから入り込めるかなと、その心配は無用だった。表紙の印象からほっこり癒されそうな、そんな心持ちで手に取った本だった。が、不意打ちに物凄い感動、心が締め付けられるようだった。
なぜ最後なのか、近づきつつある後半にざわざわしながら。
泣ける、切なくて、運命が惨くて、だけど最後は強さをもらえた。例え、大切な人の姿、形がなくなっても、ずっと心の中で生き続ける。綺麗ごとのように聞こえるかもしれないが、後に次ぐものと、魂はともにあるのだと。そこで強さをもらっていると。少しだけ歳を重ねたせいか、その意味が分かりつつある気がする。人はそういうふうに出来ているのだと。最近、ある人からその言葉をいただきふっと腑に落ちた。
旧友を訪ねあるく場面では、やっぱり自分も懐かしくなった。友達との出会いは偶然だったなあって。例えば、出席番号が前と後ろとか。なかなか声を掛けられない私は、思い切って話しかけ友達になれた。そういうドキドキした瞬間とか。各場面で自分と重なり、思い出したり、悟とナナ、そして悟の友達やノリコの心情に移入したり、一緒に回想の旅をしているようだった。旅をするストーリーは良いなと思えた。
悟の境遇が辛すぎて。だけど悟は言う、自分は幸せだったと。何をもって幸せと捉えるか。いまさらながら考えつつ読むことができた。
特に、Report-3.5 最後の旅は良かったです。
「浅い弧を描く虹の足はしっかりと丘を踏みしめている。その弧を追っていくと、もう一方の足も別の丘を踏みしめていた。虹の根元なんて僕は生まれて初めて見た。」虹の根元、なんて素敵な表現。私も見てみたい。
ナナが脱走し、野良に戻って悟に会いにゆく場面はやるせなくてたまらなかったです。
同じ景色を見ながら言葉を交わす喜び。
僕らは本当に本当にたくさんのものを見たね。
私はナナで。いつかは悟の気持ちにもなる。
私のリポートは続く。
ラスト数行、これがメッセージだと思う。
しっかり、伝わりました。
映画化されていたと知り、アマプラで探したらあった。
が、さわりだけ見て、止めてしまった。自分の頭で描いたイメージのまま、閉じ込めておきたいなと思ったから
。
- 感想投稿日 : 2022年1月2日
- 読了日 : 2022年1月2日
- 本棚登録日 : 2022年1月2日
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