まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫 み 36-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2009年1月9日発売)
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都会で、情緒あって、裏には怪しい場所もある各地にありそうな街まほろ。便利屋でなく便利軒というのがいいと思った。駅前の風景が浮かびそう。
ほっこり、色々な依頼人との交流を描いてゆく、というだけではなかった。
表紙が気になっていました。この本を手に取ったのは偶然ですが、表紙の印象より深い本だった。
便利屋を営む多田と風変わりな行天。あつい友情、とも違う。過去にわだかまりがある二人が切磋琢磨しながら見出すものはなにか。
行天は多田に「俺の小指にさわってみな」という。
(過去の)傷口に触れるのが苦手な私だったら、無理無理、というところだろう。
「傷はふさがってるでしょ。すべてが元通りとはいかなくても、修復することはできる」
この言葉、自分が聞き取る年代によって、受け取り方が違うのだろうな。
失ったものが完全に戻ってくることはなく、得たと思った瞬間には記憶になってしまうのだとしても。
幸福は再生する。形を変え、さまざまな姿で、それを求めるひとたちのところへ何度でも、そっと訪れてくるのだ。
「形を変え、何度でも」なんだなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年3月31日
読了日 : 2021年3月31日
本棚登録日 : 2021年3月31日

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