すみなれたからだで

著者 :
  • 河出書房新社 (2016年10月17日発売)
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本棚登録 : 575
感想 : 77
5

胸が抉られるようにズキズキした。生と性を描いた8つの短編。人の気持ちや考えを文章に表現すると、こんなにも鋭く刺さるものかと思わされた。
父親に翻弄される人生を送ってきた、「私」と「兄弟」、2つの章。その対峙の仕方。「私」の心情がびしばし響き、著者の気迫を感じた。生涯忘れられない様々な恋、(おそらく)誰もが、ほのかに心に持ち続けるそれはあり、そういう面で心が揺れ動かされたのかなと思う。
印象的だった表題作。短い、ストーリーというより、その断面を切り取るかという。倦怠期の夫婦に訪れる変化と心の機微。日常生活で切り離せない、一つの夫婦の在り方として寄り添う性が自然に描かれていた。
ラストの「猫と春」とても好きです。
自分に正直に生きるためには、持っていた何かを手放すこともあり、それによって新たな何かを掴み取ることもできる。重い内容からも光が見えてきそうな。
一つ一つが際立ち、キレがよい独立した短編。激しく力強く、心とからだに真正面から向き合っている人たちの物語。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年6月26日
読了日 : 2022年6月26日
本棚登録日 : 2022年6月26日

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