上質なレースに包まれた向こう側を見ているようだった。幸福と共に感じる強烈な孤独とはこういうものか。
美しく静かな絶望の描かれ方が凄い。
なぜこの人なのだろう。などという短絡的な言葉ではかたづけられない主人公「私」の心情。
ストーリーに織り込まれる幼少期の回想で、「私」は閉じた自分と向き合うことになる。美しい文章で紡がれる数々の記憶がきらきらもするし、残酷にもうつる。この独特の空気感が、ざ江國さんだと思った。
最後は、仕方ないにも、あきらめにも似た、これくらいがいいかもしれない、という着地。
自己を満足させるには傷を負うこともあると、タイトルの意味にも感じられて痛い。
一冊まるごと心の葛藤(心模様)こういうのが結構好きだと思った。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年6月12日
- 読了日 : 2022年6月12日
- 本棚登録日 : 2022年6月12日
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