自閉症入門: 親のためのガイドブック

  • 中央法規出版 (1997年2月1日発売)
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感想 : 2

学術書的なクオリティを保持したまま、一般向けに自閉症についてかかれたものが本著なので、まあ、学術書に分類してもいいようないくないような曖昧な雰囲気。一応、副題は親のためのガイドブックとあるけれど、別に親じゃなくとも、これは読むべき本ではあると思う。大抵の人は、自閉症について漠然としたイメージとか、目が変な方向向いていたりして、自分の狭い世界に閉じこもっているみたいな知識しかないのだろうだから、というか、自分自身がそんな感じであったし。で、ちなみに精神疾患の原因を考えるときに、心因、外因、内因との三つがあるらしい。で、実は外因も内因も脳の器質異常らしいね。ただ、脳の器質異常が、ウイルスや分娩時の窒息とかによって生じる場合と、遺伝的に元から器質異常であった場合とで外因、内因がわけられるのだとか。で、心因つーのは、抑鬱や神経症など、心理的なストレスなどによって生じるとされるもの。で、自閉症はずばり外因と考えられているらしい。もちろん、遺伝的な側面も鑑みられるのだけれど、自閉症児はその多くが、他の脳の外因的な器質異常による他の障害を持ち合わせているのだとか。つーことは、外因的な器質異常が一定以上もたらされると自閉症が発生する可能性があると、推測される。ただし、例外もあるし、また遺伝的な要素も否定はしきれないため、自閉症の原因を探ることはかなり困難を極めるものの、ただ一つ言えることは決して心因ではないということ、だから育て方や愛情不足がその理由ではなく、むしろ、自閉症であることによって子供にうまく愛情を抱けなくなってしまうようなケースがあるだけのようである。

で、ちなみに自閉症って現在的にはそういう定義はされていなくて、広範的発達障害なるものがあってその中に含まれてしまっている。例えば、言語的な遅れのない自閉症と言われるアスペルガーもここに含まれるし、その他、レット障害(手を洗うような動作を繰り返す=女児に多い)や、小児期崩壊性障害(二歳頃から獲得した機能が低下していく)なんかもここに含まれる。とはいえ、自閉症はやはりその中でも特異的なものではあるようだ。一般的に知能障害などを伴うことが多く、言語的遅れ、社会的能力獲得の遅れ、創造性の遅れ、反復固執などといった要素がその特徴として見受けられる。とはいえ、中には知能が高いものもおり、言語的遅れを取り戻せる者もいるし、社会的能力をある程度は獲得できる者もいるらしい。このある程度っていうのが味噌ではあるんだけれども。ちなみに、創造性などにおいて(絵画、音楽、計算など)特殊能力を持っている児童をサヴァン症候群と呼び、そしてサヴァン症候群と思しき者はその代わりとして、自閉症などの障害を伴っていることが多いのだとか。で、自閉症には力動的な精神分析よりも行動療法による褒めとしつけのほうが効果があるらしい。言語能力や認知能力、社会的能力に欠陥が見られる以上は、言語を用いる一般的な精神分析とは相性が悪いとも言える。例外は芸術療法や音楽療法、箱庭療法、遊戯療法などであろう。あと、そういえば、自閉症者は小脳あたりが小さいということも報告されており、まだまだ研究が推し進められなければならない分野である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 臨床心理、精神分析、精神病理
感想投稿日 : 2011年9月6日
読了日 : 2011年9月6日
本棚登録日 : 2011年9月6日

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