夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫 も 19-2)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング (2008年12月25日発売)
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感想 : 4989
5

いや~最高に面白かった。
「腐れ大学生モノ」の傑作。
さすが山本周五郎賞受賞作品。

モリミ~先生の著書は『夜行』と本書と同じ「腐れ大学生モノ」である『四畳半神話大系』しか読んだことはないけど、僕は断然こっちの「腐れ大学生モノ」が好きだ。
もう、あまりにもバカバカしすぎて読むのがやめられない。

そしてモリミ~先生の古臭いような特殊な文体も好きだな~。
読んでいて、
  あれ?昭和?大正時代かな?
なんて描写があるのだけれど、そこにいきなり「携帯電話」なんてハイカラな単語が飛び込んでくるものだから、自分の脳内でのタイムトラベル回数がもう半端ない。

そして今回もモリミ~先生が描く「黒髪の乙女」がもう最高である。
本書に登場するヒロインの「黒髪の乙女」は、男の妄想を
  もう、これでもか!!
というくらいオーバーに描きまくった美少女。
今回の「黒髪の乙女」はなんてったって、そりゃもう、ただの美少女ではない。
どんな男でも彼女と一度ふれ合ったら
  彼女は良い子だ。ああ、良い子だ。
と100パーセント恋に落ちてしまうような超天然ほんわか系の女子大生なのだ。

この「黒髪の乙女」視線で描かれるシーン(本書は恋愛小説には珍しく「先輩」視線と「黒髪の乙女」視線で交互に描かれる)はまさに絵に描いたようなというか、ページの間から、なんかそこはかとなく良い匂いがしてきそうな感じといえば分かりやすいだろうか(分かるわけないかw)。

本書を読んだ女性読者からは、
  絶対こんな女子、いねえから!
  男は女に妄想抱きすぎ!!
という怨嗟に似た怒号が聞こえてきそうだが、そういった世知辛い世間の声を華麗にスルーし、この絵に描いたような美少女を自分の思い思いの方法で愛でる(←あくまでも法に触れない方法でね☆)のが正しい男子読書人の在り方だろう。

しかしながら、極めて個人的な現状をあえて言わせていただいてよいのならば、僕はいまだに前作『四畳半神話大系』の「黒髪の乙女」であるクールビューティーな明石さんの「ぎょええええ」に心を鷲掴みされたままであることをここに報告しておきたい。

という訳で、本書はその内容も素晴らしいのだが、末尾の解説がまた凄いということをお伝えせねばならないだろう。
漫画『3月のライオン』や『ハチミツとクローバー』の作者・羽海野チカ氏による解説(というかイラスト)が素晴らしいのだ。
もう、本書に登場するヒロイン「黒髪の乙女」の姿が完璧というか、それそのものが描かれている(笑)。
この解説(イラスト)を読むだけでも、この文庫本を手に取る価値はあるだろう。
このバカバカしいながらも、一服の爽やかな風が胸の中を通り抜けていくようなこの物語。ぜひ、一読していただきたい小説である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(エンターテイメント)
感想投稿日 : 2020年11月21日
読了日 : 2020年11月10日
本棚登録日 : 2020年11月21日

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