「わたしはこのバラが好きです。わたしはアンネを悼みます。ただし、これは一本のバラです。乙女はこのバラをアンネと呼んではいませんか」
初めて読んだのは10年前。話の意味を完全には理解しきれていなかったんだけれどそれでもずっと好きな小説です。10年間何度も読み返したはずなのにやっぱりわかるようでわからない、痒いはずなのに違うところを掻いているような、霞をつかむような話。今回またふと読みたくなって読んでみたらなんか以前よりも理解できてる気がする。バッハマン教授はアンネをロマンチックに語ることを許さない。そしてアンネが自分がオランダ人になりたいと言った日を一番大切な日だと言う。
タカヨも麗子様もアンネの言葉で自分が何者かを語ったけれど、「それは許されないこと」だと断言する。タカヨのことはバッハマン教授の知るところではないが知ってたとしてもやっぱ「許されない」って一刀両断するんじゃないかな。だからタカヨが女王様って言葉を忘れたときにタカヨ!!ってキレながら拍手していたと思うし。
名前を奪わせるな、おまえが何者かを忘れるな。それを忘れたときに乙女はおまえを密告する。乙女とはなにか、どうしてミカ子は他者になりたかったのか。
理解できる気がするだけで、やっぱりまだ全然理解できてないのかもしれない。それでも好きな小説です。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年10月14日
- 読了日 : 2010年12月23日
- 本棚登録日 : 2010年12月23日
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