十一番目の志士 下 (文春文庫 し 1-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (1974年11月25日発売)
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「十傑」から漏れるという意味での「十一番目」かとも思いを巡らせ、改めてその十傑と呼ばれる人の並び具合を見てみた結果どうも違うらしい。やはり冒頭部の「伝世十一代で…」の部分が本命として考えるのが妥当なのだろう。

あとがきで気づければもう少し幸せだったのかとも思いつつ、柱島出身の歴史家奈良本晋也氏であるからこそ言える多少キツ目の「もの言い」も楽しませていただいた。世の中には司馬遼太郎を史実と空想をごちゃまぜにした戦犯のように扱う人もいるようだが、そういう人達は彼という人がいなければこんなにも歴史上の人物が今日の我々にとって生き生きと伝わってくることは非常に難しいことであったろう現実を棚にあげてしまっている。奇兵隊の隊員名簿に「高杉晋作」という項目があったとしてそれだけではなんの人となりも伝わってこないし、そもそもそんな名簿を見ようという動機も生まれない。その彼の口を借りてあれやこれやと言わせることにより俄然魅力が備わってくる。シバさんは本人の筆においても「自分は歴史家ではない」というようなことを重ねて言われていたはずだがやはりそうなのだ。我々がシバさんの作品を通して楽しむべきところ、それは彼がそうした史上の人物の所作や口を借りて我々に伝えんとしていたのはなんだったのだろうということを考える場をを与えてくれていることそのものなのではないかと。

で、話の筋もおもしろいのだからなおよい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年10月17日
読了日 : 2014年8月4日
本棚登録日 : 2019年10月17日

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