大転換する日本のエネルギー源 脱原発。天然ガス発電へ (アスキー新書 199)
- アスキー・メディアワークス (2011年8月10日発売)
大枠として、これからの日本のエネルギー政策は、原子力から天然ガスへシフトしていくべきという論はうなずける。
しかし、少々、天然ガスに傾倒しすぎている点が気にかかった。
原発や他のエネルギーにおいてもだが、エネルギー政策を考える際には、日本の特異な事情を勘案する必要がある。
パイプラインについては、島国日本において実現するには多大なコストがかかるし、ロシアとの関係が重要になる。
バーゲニングパワーを獲得すべきと言いつつ、再生可能エネルギーへの投資に対して消極的な姿勢なのもよく分からない。
天然ガスは今後、世界中で400年程度は使い続けることができるということだが、「400年」という期間を「無尽蔵に近い数字」と言ってしまうのはいかがなものだろうか。
極端なことを言えば、そのツケを後にまわす姿勢が、再生可能エネルギーなど長期的に必要な技術への投資を後ろ倒しにし、短期的に利益を得られる原子力を推進し、原子力ムラなどの利権構造を作ってきたと言えるのではないだろうか。
また、シェールガスの開発については、地形変化や水質汚染、地震誘発などの課題が指摘されているが、本書においてそれらの問題に対してほとんど触れられていない点が気にかかった。
本書の最終章における「供給サイドの省エネ」やスマートコミュニティなど、これから必要となる技術や考え方についての示唆が多いことはよかった。
ただし、本書の発売から2年が経ち、大枠として変化はないと思うが、その間に原子力や再生可能エネルギーに関しては環境が大きく変わってきている部分があるため注意が必要かもしれない。
全体的に、天然ガスを持ち上げすぎている感はあるものの、天然ガスを知り、脱原発に向けた新しいエネルギーを考えるために読んでおいて損はない一冊。
- 感想投稿日 : 2014年5月26日
- 読了日 : 2013年9月16日
- 本棚登録日 : 2014年5月26日
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