どこまでもイメージや象徴の世界に生きていたひとなんだと思う。なるたけ言わずに眼前に示したい、そんなことを目指していたように感じられる。
だから、書くということにかけて、非常にタイトで、文章に無駄がない。ヘミングウェイのそれと同じ匂いがする。そういう点で、太宰が絶賛したのは十分にわかるし、大家であると思う。
けれど、どうしても精神に欠けているように思えてしまう。ことばからイメージを抽出しようしようと、うーんとうなっている姿は見えるが、生きてことばで考えてみようとは考えていない。ことばの存在を前提にしているため、彼は、それを不思議に思ったり、存在に思いを馳せる性質のひとではないのだと知った。
別にそれが悪い訳ではないし、物語を書くということで必ずしも必要だとも限らない。
けれど、非常に不自由だと感じてしまう。何を表現するかで頭を悩ますより、何が表現されているのか考える方がよっぽど生産的だと思う。
ただ、彼ほどの大御所にもなってくると、何を述べるかで、多大な影響を及ぼしてしまうというのもあったのだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
物語
- 感想投稿日 : 2016年10月24日
- 読了日 : 2016年10月24日
- 本棚登録日 : 2016年10月24日
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