今はもうない (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2001年3月15日発売)
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本棚登録 : 7473
感想 : 572
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S&Mシリーズ8作目!

実は語り手が犯人だった、とか、キーパーソンが多重人格で事件に関わった記憶を無くしている、とか…、そういうミステリー作品にありがちな公式的なものが、通用しなくて…。もう8作品めなので、そろそろ見破れませんかね自分、と思いながら読み進めましたが、今回も「そーくるかぁ!」と脳内で騒がさせて頂きました。どんどん沼にハマっていく気しかない。

最終章の1番最後の行、これがホントのどんでん返しなのか……と、思い知らされました笑
他作と違い、なんで萌絵ちゃんでも犀川先生でもない人目線からの語りなのか……早く2人の掛け合いを見たい……とうずうずしてましたが、これも重要な設計図の一部だったのですね。

ラスト、この終わり方を、後味悪いと捉えるか美しいと捉えるか。色々な読み方が出来そうだと思いました。
私自身、白黒ハッキリさせたい、正解…を追求することに熱を上げてしまう私ですが、「分からない」=恐怖、と感じていて、恐怖から逃れるために追求→結局余計に分からなくなって→また調べて……の堂々巡りになる理由として、「安心したい」という欲があるのかな、という考察がしっくり来ました。「分からない」はそのままでいい、犀川先生みたいに、追い求めた末「分からない」が広がった空間をむしろ楽しんでしまった方が、良いのかもしれないと思えました。

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ハイライトめも
①世の中には、明らかにならない方が良いこと、そのままにしておいた方が幸せなことが沢山ある。───綺麗なものに理由がないように、私たちを魅惑する全ての存在は、理屈がない。
②考えて見てほしい。尻切れとんぼではない人生なんて、あるだろうか?終わりなどというものは、誰かが勝手に終わりだと決めた時が、そうであって、それ以外に区切りは無い。
③「どう違うんですか?洗練と最適は」
「最適でないものを許すことが洗練だ」
④そもそも思考そのものが、コミュニケーションの産物なんだよ。伝達するために思考する、と言っても良い。
⑤ちょっとしたことなのに確かめもせず、人はどんどん妄想を広げる生き物なのだ。きっと、妄想を望んでいるのだろう。
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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月15日
読了日 : 2023年8月15日
本棚登録日 : 2023年5月29日

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