珍しいスタイルの謎解き本である。
資産家が屋敷で殺害され、邸内にいた10人が被疑者になるが、検視法廷で詳述される、それぞれの証言により犯人が判明できるという。タイトルの'迷路'は、被疑者多数の状況で、犯人が特定できない比喩として使われている。殺害があったフロアや犯行現場の見取り図が犯人に繋がる情報として開示されている。被疑者の証言から犯人を特定することにお手上げになってる中で、現場にいないゲスリン大佐(名探偵の触れ込み)は、送られてきた法廷記録だけで真相に到達する。読者はゲスリン大佐と同じ条件のもと、すべての情報が公平に提供されていて、犯人がわかる挑戦になっている。ゲスリン大佐が、犯人を名指しするプロセスには軽さを感じるが、この事件の後、関係者のその後の様子が綴られている構成は、事件の余韻を静かに閉じさせていく趣きが感じられる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年9月22日
- 読了日 : 2021年9月21日
- 本棚登録日 : 2021年9月18日
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