文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

  • 草思社 (2005年12月21日発売)
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過去の事例より、著者が述べる文明衰退の原因は大きく3つ。①環境破壊②資源枯渇③人口爆発。グローバル化、科学技術の発展により影響を局所化することが困難なため、世界は一蓮托生な状況になってます、との現状分析。「文明崩壊」に共感するのは、"大変だ~"で終わらず"具体的に何ができるの?"まで落とし込んでいる所。著者の本気度と危機意識を感じる。スタンスは現状の深刻さを認識しつつ、希望を失わない「慎重な楽観主義者」だそう。「まだ希望ありそうなので息子つくりました、テヘ」とか言うとるし w

で、現状必要なことは2つ。1つ目は長期的な思考を実践する勇気。人間の病気でも同じやけど、定期的に検査して予防に力入れたほうが結果的に安上がりなことが多い。目先の問題に対処しつつ、将来に対する想像力を持てるか、てのが必要やと思います。政治家も私たちも。

2つ目は既存の価値観を捨て去る勇気。マーケティング理論で「イノベーションのジレンマ」いうのがあります。過去の成功体験に足を引っ張られず、変化する状況をゼロベースで分析して残すものは残す、捨てるものは捨てる、その冷静な判断が大事。


そして、環境破壊の主役、企業にも2つ申してました。1つ目は「環境保護的な経営方針を採らせたいなら、倫理とか良心に訴えず、環境保護が企業の利益になるよう仕向ける」。信用できる団体から認証された製品を購入する、など。団体の例としては、森林管理協議会(FSC)や海洋管理協議会(MSC)。家具のイケアや日本のイオンも参加してました。持続可能な林業、漁業になっているか、というところを見てるようです。余裕があれば少々高くても認証済みの製品を買ってみる、などはどうでしょう。

で、2つ目は「ビジネスの鎖の中で、一番敏感な輪を狙って圧力をかけろ」。例としては、狂牛病対策に5年抵抗したアメリカの食肉業界が、売り上げ減に苦しむマクドナルドの圧力により数週間で対策受け入れ。金鉱山のシアン化物汚染対策を訴える環境団体がティファニーに圧力をかけ、環境対策に力を入れているリオ・ティントと契約を結んだ事例、などが挙げられてました。そういえば「ザ・コーポレーション」いう映画(本も)ありましたね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サイエンス
感想投稿日 : 2013年2月24日
読了日 : 2010年8月15日
本棚登録日 : 2013年2月24日

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