本のタイトルになっている「大聖堂」はもちろん素晴しい。
このほかに気に入った作品は「コンパートメント」。
どこかエキゾチックでシュールな雰囲気がなんともいえない味わいがある。
「ささやかだけど、役に立つこと」は、いくつかあるバージョンのうちこれが一番好き。
ほんの少しだけど温かみがあって救われる思いになる。
どの作品も簡素な言葉でつづられているからこそ、
心にぐいぐい突き刺さってくるものばかり。
読んでいてときどき辛くなるくらい。
ある男が、自分の朝食がドーナツとシャンパンになっていることにはっとする瞬間、
でもシャンパンの瓶に直接口をつけることに抵抗を覚えなくなる瞬間、
するすると音もなく堕ちていく人間のほんの一瞬のターニングポイントを
まったく感傷を交えずに淡々と描写する作者の筆は恐ろしいくらいだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外小説
- 感想投稿日 : 2011年11月5日
- 読了日 : 2011年11月1日
- 本棚登録日 : 2011年11月1日
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