わりと期待して読みはじめたのだが、苦笑しか出てこなかった。
巻頭に入っている突然空からミラーボールが降ってきて云々、という表題作の"ちょっといい話風"短編が論外に浅薄だったせいで、読み始めから蹴つまづいた感がある。
いくつかの短編が入っていて、構造としては、酸いも甘いも知った風の中年女性が、ひょんなことから知り合ったバカな童貞君を冷めた視線で見下そうとするのだが、同時にその若さに惹かれてもいて、その二律背反を抱えた自意識を自嘲的なモノローグで吐露していく、という流れが多い。
多分、女性心理の描写は的確なのだろう。が、登場する男性達の行動が不自然で、とにかく物語的に都合よく行動するのでまったく真実味が感じられない。
男性が「バカなやつ」というよりも「都合のいいやつ」になってしまっており、作者のこうだったらいいのにな、という願望をことごとくトレースして行動する「作者の妄想を体現するキャラ」になってしまっている。そのため作者の自己愛を満たすための妄想以上の何かが漫画上にまったく見えてこなかった。
基本的には作者の悩んでいる自分への自己愛と、こんなに色々考えている自分の苦労をわかってほしい!という自意識の暴走を見せつけるような話であり、「大人の女性には色々あるんだよバカ野郎」という主張であればそれはそれで良いと思うのだが、どこか変に格好つけているというか、最初から逆ギレのスタンスで正当性を主張するために必死になっているような感じがあってなんだか非常に面倒臭かった。
都合のいい女の子に囲まれた男性が悩む自分に自己陶酔するような妄想本は世の中に沢山あるが、やっていることはそれの逆バージョンであり、その意味では一定の需要はあるだろうしアリと言えるのかもしれない。僕は男なので噴飯ものだったが。
- 感想投稿日 : 2011年12月15日
- 読了日 : 2011年12月14日
- 本棚登録日 : 2011年12月14日
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