輪違屋糸里 下 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (2007年3月9日発売)
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新選組が行った大和屋焼討ちの凶行は会津藩御重役の謀であったというのが面白く芹沢鴨の苦悩に同情すら感じる。また、新選組副長の新見錦は禁じらている押借りをわざと働き脱藩した水戸に戻ろうとするが土方らに詰め腹を切らされてしまう。土方の完膚無きまでの策略に身震いしてしまうが、芹沢鴨暗殺に島原の糸里や吉栄までをも巻き込んでいく辺りが百姓が如何に本物の武士を恐れているかが描き出されていて面白いし、本当にそうだったのかも知れないとも思う。暗殺の中で糸里が土方らに「〜お百姓のままでええのやったら、わてらを斬りなはれ。〜そしたらあんたら新選組は、晴れて天下のどん百姓や」と罵倒する場面は武士になりたかった土方らに痛烈な言葉だ。自分の生い立ちや世の中の混乱で理不尽な事に巻き込まれながらも糸里の芯の強さが感じられる。登場人物の一人一人の心情に感激でき、じっくりと読んでしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年1月29日
読了日 : 2010年8月23日
本棚登録日 : 2010年8月14日

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