べゾノミクスが世界を埋め尽くすという衝撃的なタイトルに惹かれ、現代の世界の小売業界を支配しているようにも見えるAmazonの戦略と野望を知りたくて読んだ。
Amazonのビジネス戦略の中心にあるのは徹底的な顧客主義と超長期的志向。
AmazonにおいてはAIがあらゆる事の土台となり、意思決定の多くを機械によって下すまでに達している。
“べゾノミクス”とはAI技術をあらゆる分野に組み込み、大量に集められた顧客情報をビッグデータとして解析しより安く、便利なサービスを提供するというビジネスモデルを指すが、このようなモデルはAmazonだけにはとどまらず様々な業界に波及し、ビジネスのルールが激変している。
このような流れは例えAmazonが無くなったとしても変わることがないと予想され、文字通り世界を埋め尽くす破壊的なイノベーションと見ることができる。
以下気になった点を挙げると、
①AI技術を活用した大衆向け、大量の商品を出来るだけ安くという価格競争ではAmazonには勝てない。競合する企業はAmazonの苦手なことを理解した上での戦略が必要
②Amazonの苦手な事とは、高度にパーソナライズされたサービスで、顧客にとってオーダーメイドのラグジュアリー体験を提供することや、社会的な善(ソーシャルグッド)を追求したビジネスモデルなど。こういった努力により価格競争から脱却を図る
必要がある。ニッチ、人間味、カスタマイズ、パーソナライズが鍵となる。
③Amazonプライム会員に加入することで無料配送、音楽やビデオのストリーミングサービスが受けられるなどの多くのメリットがあり、Amazonのエコシステムに顧客を取り込むことに成功しておりさらなるフライホイールの加速につなげている。
いろいろと批判もあるAmazonの戦略だが、徹底的に自らのビジョンを貫くジェフベゾスの冷徹なまでのビジネスへの姿勢を本書を通して知ることができたのが良かった。
スマートフォンからAmazonの商品を注文する度に、そのワンクリックの先でなにが起きているのかが少しは理解できたと思う。
今後もAIフライホイールを高速で回転させ宇宙規模のビジネスを目指すAmazonの野望はまだまだ始まったばかりなのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2021年1月11日
- 読了日 : 2021年1月12日
- 本棚登録日 : 2020年12月5日
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