ふんわり穴子天: 居酒屋ぜんや (ハルキ文庫 さ 19-4 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2017年1月1日発売)
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感想 : 55

時代小説の女性作者の本をよく読んでいるのだが、この坂井希久子氏の本は、初めてである。

江戸時代の職業も沢山 小説に出て来るのだが、この本は、鶯の声を聞かせることを生業としている旗本の次男坊 林只次郎が、主役である。
そして、彼は、居酒屋「ぜんや」の美人女将 お妙に、秘かな想いを抱いている。
お妙は、美人で、料理が上手く、女性的であり、誰しもが、ちょっかいを出すので、只次郎は気が気でない所が又話が面白い。

5話から構成されているのだが、最初の「花の宴」に桜鯛の黒ゴマ和えが、出て来るのだが、、、その変化に興味深々になってしまうほどである。

それでいて、羽織裏にお金をかける江戸っ子気質に、只次郎の義理の姉 お葉には、亡き母の小袖を羽織裏に仕立て直して来てくれている父に、今までにない父の優しさを感じる一コマも、人情味あふれている。

「鮎売り」
こけて、鮎を傷物にしてしまった小娘の困っている様子を見て見ぬふりが出来ずに、お妙は、全部購入してやるのだが、、、「情けは人の為ならず」、、、その気っ風の良さに、店は、繁盛してしまう。
傷物の鮎は、賄い用として鮎粥に。
料理だけでなく、口やかましいお勝が、風邪をひいた時に欲しい物は、、、、

「立葵」
梅雨入りで、只次郎の母も、季節柄、寝込んでいるのを、お妙に鴨料理を作ってもらう。
本の話ではないが、昔の農家の人は、家に鶏を飼育しており、お客が来た時にもてなす意味で、鶏をしめて献立におせたと、聞いていたから、お妙が、さっさと鴨を調理するのも、可能なのだろう。

「翡翠蛸」
何と綺麗な料理の名。
昔の武士は、キュウリの輪切りが、葵の御紋に似ているために、食さない。
キュウリをおろして調理するのをこの本で知って、今度試してみようと思った。
お志乃の嫉妬と、つわり。
女は強い。眉を剃りお歯黒に。

「送り火」
精進落としに、鰻なのだろうが、ここでは、少し安価な穴子料理。
焙烙で芋がらをいぶして、霊を送り出す送り火の中でお妙の見たのは、、、、亭主だったのか、、、、、

ふんわり穴子天を題名にしたのは、これだったのか?と、、、、思った。最後の鶯 ルリオの言い分の所は、なんだか楽しく読んでしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年11月28日
読了日 : 2017年11月28日
本棚登録日 : 2017年11月28日

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