【感想】
自殺に失敗した男が新聞に『命、売ります』という広告を出すところから話は始まった。
前提として、この話は「社会における何らかの組織」にもはや属さなくなった主人公と、組織にいまだ属するその他登場人物に分かれている。
「もはや自分の命なんていらないから、何でも割り切りまっせ」という主人公の飄々っぷりや、変な依頼をする様々な依頼人たちとのやり取りが読んでて面白かった。
と、序盤から中盤にかけてはコミカルな展開なのだが、後半から一気に物語はスリリングな展開へと突入してゆく。
終盤、次第に命が惜しくなった主人公は助けを求め始めるが、「組織に属さない」主人公を国家権力の警察ですら助けてくれないといった終わり方に。
内容そのものもとても面白かったのですが、それ以上に社会から外れてしまうリスクについて、非常に考えさせられる1冊でした。
【あらすじ】
ある日、山田羽仁男なる27歳のコピーライターが自殺を図る。
はっきりした理由はなかったが、あえて探れば、いつものように読んでいた夕刊の活字がみんなゴキブリになって逃げてしまったからだ。
「新聞の活字だってゴキブリになってしまったのに生きていても仕方がない」と思った羽仁男は大量の睡眠薬を飲み、しかし救助されてしまう。
自殺未遂に終わった羽仁男は、もはや自分の命は不要と断じて会社を辞め、新聞の求職欄に「命売ります」という広告を出す。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2020年5月16日
- 読了日 : 2021年4月28日
- 本棚登録日 : 2020年5月16日
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