ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290)

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  • 中央公論新社 (2009年11月25日発売)
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金融チートスキルでおっさんが無双する! みたいな煽り文句に惹かれて購入したのだけれど、本当に面白かった。
独立後、政情も安定しないルワンダの中央銀行総裁として赴任した方の回想記録。

公邸も、銀行を運営するためのまともな人材も何もない中、大統領と会った時に、まずミッションを尋ねルワンダ人の福祉のために、という共通の目的を確認した後は、ひたすらにルワンダ人を直接尋ね、彼らに寄り添い、ただ与えるだけではなく、ルワンダ人が自ら独立できるよう銀行運営だけでだけでなく、金融政策から国を建て直すために奔走している様が伝わってきました。

例えば、ルワンダ人は金を稼いでもビールを買っておしまいだから、というような批判には、それは物が適正な価格で十分に流通していないからだ、と指摘し、流通と公定価格を慎重に見極めて政策を実施した結果、人々の生活水準(服装や食事)が明らかに向上していく。

金融がどれほどに国に影響を与えるのか、ということを初めて知って非常に勉強になりました。何よりも、国民の福祉を第一に据え、ある意味国家百年の大計を抱けるこの方がこの時期にルワンダの中央銀行総裁として赴任されたことは、何よりも僥倖だったのでしょう。

それでも、その後のルワンダの動乱で多くの命が奪われ、向上していたルワンダの経済もあっという間に悪化していく……。建て直すには時間がかかり、破壊するのはあっという間だというなんとも人間社会の難しさをも改めて感じた一冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2021年3月21日
読了日 : 2021年3月21日
本棚登録日 : 2021年3月4日

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