遺伝子はダメなあなたを愛してる (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618047

作品紹介・あらすじ

家庭や職場など、日常生活で生じるさまざまな疑問と悩み。その解答を生物学者の著者に聞いてみたら-?雑誌「AERA」の大人気連載コラム「ドリトル先生の憂鬱」をまとめた一冊が待望の文庫化。おかしみあふれる語り口に、生物の真理がたっぷり詰まった人生の指南書。

感想・レビュー・書評

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  •  良質な科学エッセイの著作を続々と刊行している人気生物学者の、最新刊。『AERA』の連載コラム「ドリトル先生の憂鬱」の単行本化である。生物にまつわる疑問を中心とした読者(?)の素朴な疑問に、著者が2ページないし4ページで回答していく内容だ。

     生物学者ならではの豊富な科学的知見、最新の科学トピックを随所にちりばめつつ、堅苦しい内容になっていない。話し言葉の平明な文章はあたたかい印象だし、上品なユーモアと深みのある考察が絶妙なアクセントになっていて、科学エッセイとして一級の仕上がり。

     前エントリで紹介した適菜収の本は著者の意地の悪さがにじみ出た内容であったが、本書は逆に、著者の人柄のよさがにじみ出た本。

     思わず人に話したくなるような科学知識も満載である。
     たとえば、“LEDライトの明かりがなんだか寂しい感じがするのは気のせいでしょうか?”という問いに対して、著者は次のように明快に答える。

    《近年とみに都会に普及した青色発光ダイオード(LED)の細かい輝きのイルミネーションを見ると、華やかなはずなのに、私も一抹の寂寥を感じます。なんだか冥界を垣間見たような気持ちがします。おそらくそれも、LEDが冷たい光だからかもしれません。

     さて冷たい光とはなんでしょうか。それは発光のためのエネルギーが、熱になることなく、光に変換される率が高いということです。普通の燃焼、たとえばろうそくの火では、光への変換効率はたった4%程度。残りのエネルギーのほとんどが熱となって散逸してしまいます。(中略)LEDの効率は約30%。だから節電になるのです。そして、ホタルの発光効率はなんと90%。ほとんど熱への損失がありません。究極の冷たい光です。ここまで完璧に近いエネルギー変換効率は人間には到達できていません。》

     もう一つ例を挙げる。

    《私たちは炭水化物そのもの(小麦粉やイモ)あるいはタンパク質そのもの(卵の白身)には、味を感じません。それが崩れかかったとき、つまり分解し始めるとき、そこから放出される糖やアミノ酸に対して甘みやうまみを感じるのです。
     これはおそらく獲物が傷つき、倒れて、動けなくなったとき、その場所へアプローチするため、甘み・うまみ成分の濃度勾配をたどれるよう、進化の途上、生み出された能力であることを示しています。》

  • 多種多様なお悩み相談に対して、生物学の視点からの回答。
    最後の働き蟻の話、興味深かった。遺伝子は確かに種の繁栄に有利なようにプログラムされている。でもそれ以上に、遺伝子は「むしろ、自由であれ、といっている」

    ・光合成がもし人工的にできたらエネルギー問題にブレイクスルーをもたらす。
    ・生命にとって必要な情報は「現れてすぐ消える」
    ・カビをとったつもりでも餅の中に侵入していることがある。
    ・蛍やLEDの光が冷たく見えるのは、光への変換効率が高いから。蛍は90% 人間の技術はまだこれに全然及ばない。
    ・温泉の酸性水で、生態系を崩された田沢湖。壊すのは一瞬でも、もとに戻すには時間がかかる。
    ・ネズミの研究では、よく親ネズミにケアされて育ったネズミの方が、落ち着いてリラックスした大人に育つ。
    ・すべての生物は自分のニッチ(居場所)を守ってつつめしく生きているのに、ヒトだけが、あらゆるものをむさぼり食い、他の生物の棲処を踏み荒らしている。
    ・米よりトウモロコシの方が世界的には主要穀物。ついで小麦。トウモロコシは乾燥地帯でも亜熱帯でも育つ、強い植物。

  •  生物学に通じていない私にも分かりやすく、優しく語りかけてくれる本。地球に存在する生物全てが独自の特徴や生き延びる術を持っていることに強さや神秘性を感じると同時に、人間もそんな生物の一種類に過ぎないのだということを改めて思った。生物界において体の特長や大きさなどによって強弱はあれど、上等下等のランクはなく皆が環境を共有しあって生きていることを強く感じた今、「人間だけが共有ではなく占有を求めています。」という著者の言葉が胸に刺さる。ヒトという生物としての在り方とは一体何なのだろうと考えさせられた。

  • 遺伝子は決定論的ではなく,自由を享受するための存在である,という考え方は長年遺伝子に向き合ってきた生物学者ならではの逆転の視点.本編は,読者からの細かなお題に対する生物学者としての独り言群.時々盛り込まれる子供時代の回想が面白い.

  • ふむ

  • AERAのコラムをまとめたもの。あっさり読めるが、深く考えさせられる。

  • 一つ一つのトピックが一般向け、短いので読みやすい。

    先生の生物学の知識とウィットを背景にした回答が楽しい。

  • 2022/1/27 楽天ブックスより届く。
    2023/5/25〜5/27

    AERA誌に連載されたコラム「ドリトル先生の憂鬱」をまとめたもの。読者からの質問に答える形で生物学的なエッセイが綴られる。なかなか勉強になること多し。

  • 全然回答にはなってない気もするけど為になることが多かったです。

  • 普段読まないジャンルですが、流し読み。生物学者の著者のユニークな回答に時々ふふっと笑いました

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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